The International Arthurian Society - 国際アーサー王学会日本支部

北欧におけるアーサー王物語

林 邦彦(尚美学園大学総合政策学部)

 

 1.アイスランド語圏の作品群(1)(一部ノルウェー語によるものを含む)
 アーサー王物語に題材を取った北欧語圏の文学作品の中で、最も多くを占めるのはアイスランド語の作品であるが、アーサー王物語に題材を取ったアイスランド語の作品が多く生まれたのには、ノルウェー王のホーコン四世(Hákon Hákonarson[1] 、在位1217-1263年)の存在が大きい。
 ノルウェー王のホーコン四世は在位中、多くのフランス語の文学作品の自国語への翻案を指示した。ホーコン四世が最初に翻案を指示した作品だと考えられているのはトマ(Thomas)の『トリスタン』(Tristan)である。他にホーコン四世が翻案を指示したとされる作品にはクレチアン・ド・トロワ(Chrétien de Troyes)の『イヴァン』(Yvain)や、いくつかがマリ・ド・フランス(Marie de France)のものとされる短詩(レー、lai)などが含まれる。
 ホーコン四世がこうした外国文学の翻案を命じたのは、自国の宮廷人達に娯楽を与えつつ、当時は政治的にも文化的にも後進国であった自国ノルウェーを当時の先進国のレベルにまで高めるべく、文学作品を通じて自国の宮廷人に当時の先端の宮廷文化や宮廷人の生き方、作法を身に付けさせようとしたものだと考えられている。
 そして、これらホーコン四世がノルウェー語に翻案させた作品の中にはその後さらにアイスランド語へと翻案された作品も多い。アイスランドは1262年から1264年にかけてノルウェー王の支配下に入るが、それ以前からアイスランド・ノルウェー間の人的交流は活発で、ノルウェーへやって来たアイスランド人がノルウェーで写本の書き写しに従事することがあり、また、ノルウェーで書き写された写本がアイスランドへ持ち込まれることもあり、その中にフランス語の文学作品がノルウェー語へと翻案されたものが含まれていたのではないかと考えられている。[2]それらの写本がさらにアイスランドにおいて書き写されたと考えられ、上述のホーコン四世の命でノルウェー語に翻案されたクレチアンの『イヴァン』、トマの『トリスタン』が原典とされる作品は、それぞれ『イーヴェンのサガ』、『トリストラムとイーセンドのサガ』(Tristrams saga ok Ísöndar、以下、『イーセンドのサガ』とする)と呼ばれる作品となって今日までアイスランド語の写本によって伝えられている。
 なお、この二作品はいずれも日本語では『~のサガ』と訳されるタイトルで呼ばれているが、アイスランドには主として12世紀から14世紀にかけて書き記されたとされる「サガ」(saga)と呼ばれる散文の書物が多く遺されている。sagaとは元々は「物語」「歴史」を意味するアイスランド語の単語である。この「サガ」と呼ばれる書物は今日、個々の内容に応じて大きくジャンル分けがなされており、それらには、ノルウェー王の伝記を扱った「王のサガ」(konungasögur)と呼ばれるジャンルや、アイスランドへの定住から社会規範の確立、キリスト教への改宗とその結果に至るまでの個人やその家族の生活を描いた「アイスランド人のサガ」(Íslendingasögur)と呼ばれるジャンルなどが存在する。
 これらの今日、内容に応じていくつかのジャンルに分けて捉えられているサガの中に、「騎士のサガ」(riddarasögur)と呼ばれるジャンルが存在する。この「騎士のサガ」とは、外国語による騎士文学を原典とする一群のサガ、および、それらの作品からモチーフを借用してアイスランドで独自に作られた作品群の両方を含むジャンルで、上述の『イーセンドのサガ』や『イーヴェンのサガ』はいずれも「騎士のサガ」に含まれる。
 実際、『イーヴェンのサガ』の羊皮紙写本版(この「羊皮紙写本版」という呼び名については後述。以下の「1.1.『イーヴェンのサガ』」を参照。)、『イーセンドのサガ』にはホーコン四世がそれぞれの作品をノルウェー語に翻案させたことを示す記述が存在する。『イーヴェンのサガ』の羊皮紙写本版では末尾に


ここに、大ホーコン王がフランス語からノルウェー語へと移させたイーヴェン卿の物語を終える 。[3]

との記述があり、『イーセンドのサガ』では冒頭に


ここにトリストラムと王妃イーセンドの物語が書かれており、この中では彼らが二人の間で抱いていた耐え難いほどの愛が語られている。この物語が尊きホーコン王の依頼と命によってノルウェー語で書かれたのは、キリストの生誕から1226年が過ぎ去った時であった。そして修道士ロベルトが準備をし、彼の知性の限りを尽くし、この後、物語で見られるような言葉遣いで著したもので、これから物語に入る 。[4]

との記述が存在する。
 しかし、ホーコン四世がノルウェー語へ翻案させた作品については、ごく一部の作品を除き、今日ではノルウェー語の写本は遺されておらず、多くはアイスランド語の写本によってしか遺されていない。上記の『イーヴェンのサガ』と『イーセンドのサガ』についても、いずれもノルウェー語の写本は現存せず、アイスランド語の写本によってのみ伝承されている。
 なお、既述のように『イーヴェンのサガ』はクレチアン・ド・トロワの作品が原典とされる作品であるが、『イーヴェンのサガ』が含まれる「騎士のサガ」と呼ばれるジャンルでは、他にもクレチアンの作品が原典とされる作品が今日まで伝えられている。『パルセヴァルのサガ』(Parcevals saga [5])と『エレクスのサガ』(Erex saga)であり、それぞれクレチアン・ド・トロワの『ペルスヴァル』(Perceval)、『エレクとエニッド』(Erec et Enide)が原典であると考えられている。
 『パルセヴァルのサガ』と『エレクスのサガ』には、特定の人物(例えばホーコン四世)が翻案を命じたことを示す記述は存在しない。しかし、『パルセヴァルのサガ』は、原典とされるクレチアン作品との内容上の類似・相違の程度などから、『イーヴェンのサガ』と同様ホーコン四世の治世下で翻案されたか、あるいは少なくともノルウェーの宮廷で翻案され、その後アイスランド語に翻案されたものと考えられている。
 一方、『エレクスのサガ』については、詳しくは後述するが、クレチアンの『エレクとエニッド』とは内容上の大きな隔たりがあり、その点で『イーヴェンのサガ』や『パルセヴァルのサガ』とは異なる。それでもクレチアンの『エレクとエニッド』は製作年代の上で『イヴァン』や『ペルスヴァル』に先行するとされることもあり [6]、『エレクスのサガ』についても、ホーコン四世の治世下であるかどうかはともかく、少なくとも最初はノルウェーの宮廷で翻案された後にアイスランド語へと翻案されたとの見方が一般的である。
 なお、『パルセヴァルのサガ』と『エレクスのサガ』についても、『イーヴェンのサガ』や『イーセンドのサガ』と同様に、ノルウェー語の写本は存在せず、アイスランド語の写本によってのみ今日まで伝えられている。
 他にホーコン四世の治世下において、フランス語からノルウェー語に翻案された作品の中には、いくつかがマリ・ド・フランスのものとされる複数の短詩(レー、lai)が含まれる。これらの短詩がノルウェー語に翻案された一群の作品を集めたものはStrengleikar(『短詩集』)と呼ばれており、この中に、マリ・ド・フランスの作とされ、トリスタン物語の一部を題材にした短詩『すいかずら』(Chèvrefeuille)がノルウェー語に翻案されたものであるGeitarlauf(『すいかずら』)と、同じくマリの作とされ、アーサー王伝説に題材を取った短詩『ランヴァル』(Lanval)のノルウェー語への翻案『ヤヌアルの詩』(Januals ljóð)が含まれている。この『短詩集(Strengleikar)』と呼ばれる作品群はノルウェー語の写本が現存している(ただし、オリジナルのものではない)。また、『短詩集』に含まれている作品ではないが、身に付ける女性の貞操に問題があれば、それに応じてその女性の背丈に合わないほどに伸び縮みするマントをテーマにした作品『短いマントの短詩』(Le lai du cort mantel)がノルウェー語を経てアイスランド語にまで翻案された作品である『マントのサガ』(Möttuls saga)も元々はホーコン四世の宮廷で翻案されたと考えられており、さらに、この『マントのサガ』は後にリームル(rímur)と呼ばれるアイスランド独自の形態の物語詩に翻案され、『マントのリームル』(Skikkjurímur)と呼ばれる作品となっている。
 そして、『イーセンドのサガ』はアイスランドにおいて多大な影響力を持ち、作品中のモチーフが他ジャンルのサガにも取り込まれたりするほどであったが、後に14世紀かまたは1400年頃とされるが、トリスタン物語に題材を取った『トリストラムとイーソッドのサガ』(Saga af Tristram og Ísodd以下『イーソッドのサガ』とする)と呼ばれるアイスランド独自の作品が登場する。他にはトリスタン物語に題材を取ったものでは、マリ・ド・フランスの作とされる『すいかずら』(Chèvrefeuille)のノルウェー語翻案『すいかずら』(Geitarlauf)については既に触れたが、アイスランド語のバラッド作品『トリストラムのバラッド』(Tristrams kvæði、15世紀初頭?)も存在する。
 ここまでに登場した作品はいずれも、ホーコン四世の治世下かどうかにかかわらず、フランス語の作品がノルウェーにおいて一旦ノルウェー語に翻案され、それが後にアイスランド語へと翻案されたもの(『短詩集(Strengleikar)』に含まれる作品を除き)、および、それらの作品を基にアイスランドで独自に著されたと考えられている作品であるが、原典の外国語の作品がノルウェーおよびノルウェー語を経由しない形で、アイスランドにおいて直接アイスランド語に翻案されたのではないかと考えられている作品も存在する。ジェフリー・オブ・モンマス(Geoffrey of Monmouth)の『ブリタニア列王史』(Historia regum Britanniae)に含まれることになる『メルリヌスの予言』(Prophetiae Merlini)のアイスランド語への翻案である『メルリーヌースの予言』(Merlínússpá、1200年頃)、および『ブリタニア列王史』のアイスランド語への翻案で、『ブリトン人のサガ』(Breta sögur)と呼ばれる作品(『メルリーヌースの予言』とほぼ同時期?)である。
 なお、「騎士のサガ」に含まれる、外国文学を原典とするアイスランド語作品については、原典とされるフランス語等の作品と比べた際に共通して見られる特徴があり、それは、フランス語原典において豊富に見られる登場人物の心理描写や独白、物語から離れたところでの語り手によるコメント等が見られず、簡潔な文体で著されているという点である。こうした特徴はアイスランド人のサガ等のアイスランド土着のサガの特徴でもある。

 

 1.1.『イーヴェンのサガ』(Ívens saga)
 上述のように、クレチアン・ド・トロワの『イヴァン』がホーコン四世の治世下でのノルウェー語への翻案を経てアイスランド語にまで翻案されたと考えられている作品である。

◎写本について
 『イーヴェンのサガ』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM179 fol.(17世紀)不完全
AM181a fol.(1650頃)不完全
AM181c fol.(1650頃)断片
AM395 fol.(18世紀)
AM489 4to(1450頃)羊皮紙 不完全
AM588a 4to(17世紀後半)不完全

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵 Ny kgl. saml. 1144 fol.(18世紀)要約
Ny kgl. saml. 1691 4to(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 3301 4to(19世紀)

・大英図書館(ロンドン)所蔵 BL Add. 4857 fol.(1670年)
BL Add. 4859 fol.(1693年-1696年)
BL Add. 11.158 4to(1764年頃)要約

・アイスランド国立・大学図書館(レイキャヴィーク)所蔵 Lbs 3128 4to(1884年)要約

・トリニティ・カレッジ(ダブリン)所蔵 L.2.30 8vo(18世紀後半)

・スウェーデン王立図書館(ストックホルム)所蔵 Perg. 4:o nr 6(1400年頃)羊皮紙 不完全
Papp. fol. nur 46(1690年)

◎物語のあらすじ
 基本的には原典とされるクレチアン作品のものを踏襲している。クレチアン作品での主人公イヴァン(Yvain)はサガ作品ではイーヴェン(Íven)という名であるが、アーサー王の宮廷に属する騎士の一人であり、同じ宮廷の騎士であるカレブラント(Kalebrant、クレチアンの作品ではキャログルナン:Calogrenant)が、かつて失敗した泉のある国(以下「泉の国」とする)での冒険について語るのを聞き、イーヴェン自らもこれに挑戦したいと考える。アーサー王も宮廷の騎士達を連れてこの冒険に挑むことを宣言するが、イーヴェン一人は抜け駆けに及ぶ。イーヴェンはこの冒険において「泉の国」の領主と戦ってこれを斃すが、その未亡人となった奥方の姿を一目見るや、奥方への愛の虜になってしまう。「泉の国」の奥方の侍女ルーネタ(Luneta、クレチアンの作品ではリュネット:Lunete)のとりなしもあって、イーヴェンは奥方と結婚し、「泉の国」の領主の地位を得る。イーヴェンがこの国の前領主の殺人者でありながらも、その未亡人となった奥方の新たな夫として迎えられたのは、イーヴェンがその武勇を買われ、「泉の国」に常駐し、この国を敵から守るという役割を果たすためでもあった。程なくしてアーサー王とその一行が、王の当初の宣言通りに「泉の国」へやってくる。しかしイーヴェンは、彼の親友であり、アーサー王の宮廷一の模範的騎士とされるヴァルヴェン(Valven、クレチアンの作品ではゴーヴァン:Gauvain)から再び騎馬試合の旅に出るよう説得されると、一年以内に戻るとの条件で奥方から出発の許可を得、アーサー王の一行とともに騎馬試合の旅に出る。しかし、イーヴェンは一年以内には戻らず、「泉の国」からの使者として遣わされた一人の乙女を通じて、奥方からの離縁の意志を伝えられる。するとイーヴェンはショックのあまり発狂し、森にさまよい出る。その後、様々な助けを得て狂気は治癒し、それからは騎士として、様々な理由から苦境に陥っている人々の援助を続け、最後にはアーサー王の宮廷の人々の面前で、親友のヴァルヴェンと互いに相手を知らずに熾烈な戦いを繰り広げ、騎士としての名誉を回復する。再び「泉の国」の奥方の侍女ルーネタのとりなしで、奥方の寵愛も取り戻し、再び「泉の国」の領主の地位に収まる。

◎作品の特徴
 上述のように、今日、『イーヴェンのサガ』は全部で16点の写本によって伝えられているが、これらのうち、過去に研究者の間で重要視されていたのは1400年頃のものとされるPerg. 4:o nr 6(以下Stockholm6とする)と1450年頃のものとされるAM489 4to(以下AM489とする)であった。これら二つの写本はいずれも羊皮紙写本であるが、『イーヴェンのサガ』を伝える他の写本はすべて17世紀から19世紀にかけてのものとされる紙写本である。上述のように、本作の原典とされるクレチアンの『イヴァン』は13世紀にホーコン四世の命でノルウェー語に翻案されたと考えられ、上記のStockholm6とAM489は今日まで遺されている写本群のうち、最も作成年代の古いものとされるが、それでも当初のノルウェー語への翻案からは150年~200年ほど経った時期のものである。
 なお、Stockholm6には『イーヴェンのサガ』の他にも『パルセヴァルのサガ』や『ヴァルヴェンの話』、『マントのサガ』、『ミールマンのサガ』(Mírmanns saga)、『コンラウズルのサガ』(Konráðs saga)など、いずれも「騎士のサガ」に属する作品十二点が含まれており、AM489については、詳しくは後述するが、AM489はAM489 I 4toとAM489Ⅱ4toからなり、AM489 I 4toにはアイスランド人のサガに属する作品一点と騎士のサガ一点が含まれているが、AM489Ⅱ4toには『イーヴェンのサガ』、『イーソッドのサガ』など、いずれも騎士のサガに属する作品計四点が含まれている。
 これらStockholm6、AM489のいずれの写本においても、『イーヴェンのサガ』は完全な形では遺されていないが、ともに残存部分に関しては、この二つの写本の間でそれほど大きな相違はなく、また両写本とも少なくとも物語の筋の上ではクレチアン作品を比較的忠実に引き継いでいると言えよう。
 ただ、この二点の羊皮紙写本によって伝えられる『イーヴェンのサガ』では、クレチアン作品に見られた、物語を離れての作者による地の文でのコメントや、登場人物の詳細な心理描写、人物の長い独白などは削除され、その結果、登場人物が経験する葛藤や内的成長をあらわす記述が存在しない形となり、人物の行動に焦点が当てられた、進行ペースの速い作品となっている。先にも少し触れたが、こうした特徴は「騎士のサガ」に含まれる作品全般に見られる特徴であり、また「アイスランド人のサガ」等のアイスランド土着のサガの特徴でもある。
 ここまでは、従来研究者の間で最も重要視されてきた、二点の羊皮紙写本によって伝えられる『イーヴェンのサガ』の特徴であったが、これとは別に、今から三十年あまり前より、1690年にスウェーデンで作成されたとされる紙写本Papp. fol. nur 46(以下Stockholm46とする)が注目されるようになる。(以下、このStockholm46で伝えられる方の『イーヴェンのサガ』と区別し、二点の羊皮紙写本で伝えられている方の『イーヴェンのサガ』を「羊皮紙写本版」と呼ぶ。)というのも、『イーヴェンのサガ』はクレチアン作品がノルウェー語を経て、さらにアイスランド語へと翻案されたものだと考えられているが、ノルウェー語による写本は遺されておらず、『イーヴェンのサガ』におけるクレチアン作品からの改変が当初のノルウェー語への翻案時におけるものなのか、それ以降であるかの判断は難しい。
 その問題の解決につながるとして注目されたのが、紙写本Stockholm46に収められた版である。このStockholm46で伝えられる内容は、現在では遺されていない『オルムルの書』(Ormsbók)と呼ばれる写本(14世紀後半のものとされるアイスランド写本で、後にスウェーデンに移されたとされる )を基にしたものと考えられている。実際、このStockholm46以外に17世紀以降に作成されたとされる紙写本で伝えられるものには、上述の羊皮紙写本版の内容を比較的忠実に継承しているものも多い。しかし、紙写本Stockholm46で伝えられているものは、羊皮紙写本版やその内容を比較的忠実に伝える他の紙写本のものと比べ、分量が大幅に少なく、内容面でも多くの相違が見られる。特にマリアンネ・E・カリンケ(Marianne E. Kalinke)はそうした内容面の相違の中に、1400年頃のものとされる羊皮紙写本Stockholm6で伝えられる版ではクレチアン作品から改変されていながら、この1690年頃のものとされるStockholm46版ではクレチアン作品の通りに継承されている箇所(もう一点の羊皮紙写本AM489はこの箇所よりもさらに前の部分までしか遺されていない)を見出し、これを根拠に、Stockholm6のこの箇所に見られるクレチアンからの改変は後の写字者によるもので、当初のノルウェー語版は現存する最古のアイスランド語写本とされるStockholm6で伝えられるものよりもクレチアン作品に忠実なものだったのではないかと主張し、このStockholm46版の重要性を訴えている 。
 また、Stockholm46の『イーヴェンのサガ』では、羊皮紙写本版と比べ、個々の人物像についても相違があり、各々の登場人物がそれぞれの立場にある人物として、よりふさわしいと思われる人物像に改変されているのが特徴である。しかも、これは特定の箇所だけに限定されるものではなく、作品全体に亘って見られる傾向で、また、主人公のイーヴェンのみならず、他の登場人物達にもあてはまる点である。作品の前半後半を問わず、主人公イーヴェンの行動はより他者への思いやりや配慮の見られるものになっており、泉の国の奥方が夫をイーヴェンとの決闘で失ってからイーヴェンを新しい夫として受け入れるまでの経緯についても、ルーネタがイーヴェンと奥方との間をとりなして結婚させようとする際、羊皮紙写本版の奥方が、再婚を勧めるルーネタに対し、たびたび感情的な発言を繰り返すのに対し、Stockholm46版の奥方は自分自身や国の置かれた状況を配慮し、すこぶる冷静に判断を下す。また、他の人物達の言動についても、羊皮紙写本版には存在していた、何らかの事故に巻き込まれた高位の人物に対する配慮を欠いた言動がStockholm46版では削除されているという箇所が複数存在する。

 

 1.2.『エレクスのサガ』(Erex saga)
 クレチアンの『エレクとエニッド』が原典とされる作品で、詳しくは後述するが、クレチアンの作品とは内容上の大きな隔たりがあり、その点で『イーヴェンのサガ』や『パルセヴァルのサガ』とは異なる。しかし、上述のように、クレチアンの『エレクとエニッド』は製作年代の上で『イヴァン』や『ペルスヴァル』に先行するとされることもあり、『エレクスのサガ』についても、ホーコン四世の治世下であるかどうかはともかく、最初はノルウェーの宮廷で翻案された後にアイスランド語へと翻案されたとの見方が一般的である。

◎写本について
 『エレクスのサガ』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM181b fol.(1650年頃)

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵
Ny kgl. saml. 1144 fol.(18世紀)要約
Ny kgl. saml. 1708 4to(18世紀後半)
Kall. 246 fol.(18世紀後半)

・大英図書館(ロンドン)所蔵
BL Add. 4859 fol.(1693年-1696年)
BL Add. 11.158 4to(1764年頃)要約

・アイスランド国立・大学図書館(レイキャヴィーク)所蔵
Lbs 3127 4to(19世紀)
Lbs 3128 4to(1884年)要約
Lbs 1230 8vo Ⅲ(1500年頃)羊皮紙、一葉の二筋
Lbs 2498 8vo(1902年頃)

・スウェーデン王立図書館(ストックホルム)所蔵
Papp. fol. nur 46(1690年)

このように、今日、『エレクスのサガ』を伝える写本は11点存在するが、これらのうち、羊皮紙写本は1500年頃のものとされるLbs 1230 8vo Ⅲ(他の写本を綴じるのに用いられた二筋の断片のみ残存。以下Lbs 1230とする)のみで、他はすべて17世紀から20世紀初頭にかけてのものとされる紙写本である。『エレクスのサガ』を完全な形で伝える紙写本の中には、上述の『イーヴェンのサガ』の独自の版を含むStockholm46も含まれるが、Stockholm46と同様に『エレクスのサガ』を完全な形で伝え、かつ、1690年のものとされるStockholm46よりも古い写本は1650年頃にアイスランドで作成されたとされるAM181b fol.(以下AM181bとする)で、両者の内容には大きな違いはない。なお、AM181bには『マントのサガ』も含まれている。

◎物語のあらすじ
 アーサー王の宮廷では王の命で鹿狩りが行われるが、その際、エレクス(Erex、クレチアン作品ではエレク:Erec)は王妃および一人の乙女と行動を共にしていたところ、ある見知らぬ騎士が矮人(こびと)と乙女とともに馬を進めているのに遭遇する。王妃の命で騎士の素性を尋ねに行った乙女は矮人に鞭で打たれ、エレクスも同じ目に遭う。復讐をするべくエレクスは問題の騎士を追いかけて行くと、騎士はある城市に入り、エレクスは同地のある貧しい家族のもとで泊めてもらう。かつては権勢を誇っていたその家の主には一人の美しい娘エヴィダ(Evida、クレチアン作品ではエニッド:Enide)がおり、エレクスとエヴィダは初対面で互いに相手に対し、恋愛感情を抱く。その家の主によれば、エレクスが後を追ってきた問題の騎士の名はマルピラント(Malpirant)といい、金でできた一羽のハイタカを所有しており、そのハイタカを自らの恋人のために手に入れようという者は翌日、マルピラント相手に命と財産を賭けた一騎打ちをしなければならないという。
 エヴィダとの結婚が決まったエレクスは翌日、一騎打ちでマルピラントを打ち負かし、自分が昨日遭遇し、矮人に鞭打たれた騎士であることを明かす。エレクスはマルピラントに恋人の乙女と矮人を連れてアーサー王の宮廷へと向かわせ、王妃にその身を差し出し、エレクス自らが翌日、自らの恋人とともに宮廷へ向かうことを伝えるよう命じる。
 翌日、エレクスはエヴィダとともにアーサー王の宮廷に到着。結婚の宴と馬上試合が催された後、エレクスとエヴィダはエレクスの故国に帰る。しかし、その後、エレクスは騎士としての営みを捨て、終日エヴィダとの愛の生活に耽り、世の非難を蒙る。それをエヴィダの口から聞き知ったエレクスはエヴィダを連れて馬で城を出発する。エレクスは旅の途上、いくつもの冒険を克服した末、アーサー王の宮廷を訪れ、王から労いの言葉をかけられる。同時にエレクスの故国では父王が逝去し、国が混乱状態にあることを知らされ、王の勧めにより、エレクスはエヴィダともども故国へ戻る。国を平定した後、クリスマスの日にエレクスはエヴィダとともにアーサー王の宮廷を訪れ、戴冠式が行われる。

◎作品の特徴
 先にも少し触れたが、『エレクスのサガ』は原典とされるクレチアンの『エレクとエニッド』と比べ、エピソードの順序の改変、一部のエピソードの削除、新たなエピソードの追加挿入など、物語内容の大きな改変が見られる。特に物語の大きな改変が目立つのは、エレクスがエヴィダとの愛に耽った生活で非難を蒙っていることを知って旅に出てからの一連の冒険の部分であるが、『エレクとエニッド』と『エレクスのサガ』の物語内容を、エピソードを列挙する形で示すと以下のようになる。片方にしか存在しないエピソードは四角で囲っている。

 

『エレクとエニッド』『エレクスのサガ』
エレクが矮人に鞭打たれる
はいたかの冒険
エレク、三人の盗賊を斃す

エレク、五人の盗賊を斃す

ガロアン(Galoain)伯爵とのエピソード
(エニッドに横恋慕するガロアンを
エレクが打ち負かす)
ギヴレ(Guivret)との一騎打ち
(エレク敗北)

クー(Keu)との遭遇
(一騎打ちとなり、エレク勝利)
ゴーヴァンとの遭遇
アーサー王宮廷での一時滞在
エレク、二人の巨人を斃す




オラングル(Oringle)伯爵とのエピソード
(エニッドに横恋慕するオラングルを
エレクが斃す)


ギヴレとの一騎打ち

「宮廷の喜び」 
(エレク、マボナグランを打ち負かす)
(Mabonagrain)

エレクスが矮人に鞭打たれる
はいたかの冒険

エレクス、八人の盗賊を斃す


ミロン(Milon)伯爵とのエピソード
(エヴィダに横恋慕するミロンを
エレクスが打ち負かす)
グイマル(Guimar)との一騎打ち
(エレクス敗北)





エレクス、二人の巨人を斃す
エレクス、空飛ぶ龍を斃して騎士を救う

エレクス、七人の武装した男達を斃し、
八人の男女を救う

プラシドゥス(Placidus)伯爵とのエピソード
(エヴィダに横恋慕するプラシドゥスを
エレクスが斃す)
キャイイ(Kiæi)との遭遇
(一騎打ちとなり、エレクス勝利)
(グイマルと遭遇するが、戦いにはならず)

「手荒な歓待」
(エレクス、マルバナリングを打ち負かす)
(Malbanaring)

               

 クレチアン作品では別々に存在した「三人の盗賊との戦い」と「五人の盗賊との戦い」がサガではエレクスが八人からなる盗賊グループを相手にする一つの冒険になり、クレチアン作品ではエレクの一連の冒険の中ほどに存在した「ゴーヴァンとの遭遇」「アーサー王宮廷での一時滞在」がサガには見られず、「クー(サガではキャイイ)との遭遇」はサガでは物語上の位置が変わっている。また、サガでは「二人の巨人との戦い」と「プラシドゥス伯爵(クレチアン作品ではオラングル伯爵)とのエピソード」の間に「空飛ぶ龍との戦い」と「七人の武装した男達との戦い」というクレチアン作品にはなかったエピソードが挿入されている。またクレチアン作品では「オラングル伯爵とのエピソード」の後に存在した「ギヴレとの一騎打ち」については、サガではエレクスは、クレチアン作品のギヴレにあたるグイマルと遭遇はするが、両者の間で一騎打ちにはならず、エレクスが戦いで被った負傷や長きにわたる食糧不足から意識を失って倒れ、エヴィダが激しく泣いていたところへたまたまグイマルの一行が通りかかり、彼はエヴィダを慰め、エレクスを居心地の良い車に乗せ、その場所からすぐ近くにあった彼の城へと連れて行き、エレクスを療養させる、という形に改変されている。
 以上が『エレクスのサガ』とクレチアンの『エレクとエニッド』との物語内容の相違であるが、さらに『エレクスのサガ』には登場人物の人物像やその言動についてもクレチアン作品との間にはっきりとした違いが見られることが指摘されている。
 まず、『エレクスのサガ』において、マルピラントを追ってきたエレクスは、その日の晩に泊めてもらう主人の元を訪ねるが、エレクスはまずエヴィダをみて惚れ込み、その上で彼女との結婚を願い出る。自分がその地へやってきた経緯と、エヴィダの同伴を必要とするはいたかの冒険への意欲を語るのは後である。しかしクレチアンの作品ではこの順序が逆であるがために、あたかもエレクがエニッドを自らの冒険に必要な道具として利用しようとしているに過ぎないかのような印象を与える 。[9]
 次に、エレクスは結婚後、エヴィダとの愛にふけっている自身の悪評を耳にし、エヴィダを伴って旅に出、道中、エヴィダに何があっても自分に話しかけるなと命じる。エヴィダは繰り返し、禁を破って忠告し、エレクスの不興を買う。この点についてはクレチアンの作品と同様である。しかし、クレチアン作品ではエレクは、エニッドが禁を破ってエレクに忠告を繰り返す度に、エレクはそのつど罰として、彼が決闘で相手を打ち負かして手に入れた馬の世話をエニッドに課すのに対し、サガでは手に入れた盗人たちの馬の世話はあくまでエレクス自身が引き受ける 。[10]
 クレチアン作品では、エレクがエニッドに結婚を願い出ると、父はエニッドに意向を確認することなく、その場で同意を示す。しかし、『エレクスのサガ』では、エレクスがエヴィダの父に、結婚を願い出た際、父は、自分としては異存はないが、娘の意見を聞かねばならないと言い、娘の意向を一切考慮に入れない形で結婚の許可を与えることはない 。[11]
 クレチアン作品では、エレクが意識を失っている最中、たまたまそこを通りかかった伯は、エニッドを無理やり自分と結婚させようとし、自らの居城へエレクとエニッドを連れて戻ると、そこで司祭に頼み、自らとエニッドを結婚させてもらう。一方、『エレクスのサガ』においては、伯が司祭に、自らとエヴィダを結婚させて欲しい旨申し出ても、司祭は、女性の同意がない限り結婚させることはできないと言い、その申し出を却下する 。[12]
 以上が『エレクスのサガ』において、クレチアンの作品と比較した際にはっきりと見られる登場人物の人物像やその言動の相違点である。最初の二点はエレクスに関するもので、あとの二点は他の登場人物を巡るものであるが、このように、主人公のエレクスの場合であれ、他の登場人物の場合であれ、クレチアン作品と比べ、サガ作品では、より他者の尊厳を思いやるような人物像への改変傾向が読み取れる。夫は妻を大事にし、父は娘の意向を尊重し、司祭も掟や女性の尊厳を思いやる。いずれの場合も、特に女性の意志を尊重する人物像への改変である。

 

 1.3.『パルセヴァルのサガ』(Parcevals saga)と『ヴァルヴェンの話』(Valvens þáttr)
◎写本について
 『パルセヴァルのサガ』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM179 fol.(17世紀)
AM181a fol.(1650頃)不完全
AM395 fol.(18世紀)

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵
Ny kgl. saml. 1144 fol.(18世紀)要約
Ny kgl. saml. 1691 4to(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 1794a 4to(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 1794b 4to(14世紀)羊皮紙、一葉
Ny kgl. saml. 3310 4to(19世紀)

・大英図書館(ロンドン)所蔵
BL Add. 4859 fol.(1693年-1696年)
BL Add. 11.158 4to(1764年頃)要約

・アイスランド国立・大学図書館(レイキャヴィーク)所蔵
Lbs 1907 8vo(1860-70年)5行(作品の冒頭部分)

・トリニティ・カレッジ(ダブリン)所蔵
L.2.30-31 8vo(18世紀)

・スウェーデン王立図書館(ストックホルム)所蔵
Perg. 4:o nr 6(1400年頃)羊皮紙 不完全

『ヴァルヴェンの話』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM179 fol.(17世紀)
AM181a fol.(1650頃)
AM573 4to(14世紀)羊皮紙、一葉

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵
Ny kgl. saml. 1144 fol.(18世紀)要約
Ny kgl. saml. 1691 4to(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 3310 4to(19世紀)

・大英図書館(ロンドン)所蔵
BL Add. 4859 fol.(1693年-1696年)
BL Add. 11.158 4to(1764年頃)要約

・トリニティ・カレッジ(ダブリン)所蔵
L.2.30-31 8vo(18世紀)

・スウェーデン王立図書館(ストックホルム)所蔵
Perg. 4:o nr 6(1400年頃)羊皮紙

このように、『パルセヴァルのサガ』は全部で13点、『ヴァルヴェンの話』は10点の写本によって伝えられているが、不完全なものや断片、要約等も含まれる。『パルセヴァルのサガ』を伝える代表的な写本の一つは1350年頃の作成とされる一葉のみの羊皮紙断片NKS1794b 4toで、もう一つは『パルセヴァルのサガ』と『ヴァルヴェンの話』をともに完全な形で伝える最古の写本で(『パルセヴァルのサガ』では一部欠損あり)『イーヴェンのサガ』も収録されている羊皮紙写本Stockholm6(1400年頃)である。『ヴァルヴェンの話』については、上記のStockholm6と、14世紀の作成とされるAM573 4toが代表的な写本と考えられている。なお、写本AM573 4toは羊皮紙によるもので、ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』のアイスランド語翻案『ブリトン人のサガ』も含まれており(不完全)、『ヴァルヴェンの話』については一葉のみの断片しか遺されていない。

◎物語のあらすじ
 ある夫婦の間に一人の子どもがおり、その名をパルセヴァル(Parceval)といった。夫、すなわちパルセヴァルの父は農夫であったが騎士の位を持っていた。彼は立派な戦士であったが、ある王の娘(後にパルセヴァルの母となる)を奪った後、他者との交わりを避け、ある未開の土地へと腰を落ち着けたのであった。
 パルセヴァルは12歳になるまでの段階で既に父から弓や剣を教えてもらっており、三本の投槍を同時に飛ばせるほどまでになっていたが、その父は亡くなり、パルセヴァルは槍を携えて馬で森を行き、動物や鳥を殺すのが習慣となっていた。そんなある日のこと、彼は森で五人の騎士達に遭遇し、そのうちの一人に、そなたは神かと尋ねるが、アーサー王が武器を分け与えてくれることを知り、王のもとへ向かうことを望む。パルセヴァルの母は彼にいろいろと助言を与え、悲しみのうちに彼を送り出す。パルセヴァルは別れ際に母が倒れるのを目にするが、そのまま旅に出る。
 パルセヴァルはある天幕の中に一人の女性を見つけ、彼女に強引に接吻し、指輪を奪ってゆく。パルセヴァルがアーサー王の宮廷を訪れると、王妃を侮辱して国を我が物にしようとした「真紅の騎士」が金の杯を奪って出てきたところであった。パルセヴァルは王のもとへ行き、自分を騎士にして欲しいと頼むが、キャイイ(Kæi)に、真紅の騎士から武器を奪って来るように言われると、パルセヴァルは真紅の騎士を斃し、この騎士の武器を身に付ける。
 それから旅に出たパルセヴァルはゴルマンス(Gormanz)から武器の扱いを教えてもらい、様々な助言を受ける。次にパルセヴァルはブランキフルール(Blankiflúr)と彼女の城を攻撃者から守り、攻撃者をアーサー王のもとへと送るが、その後、自らの母に会いに行くため、ブランキフルールの城を後にする。
 そして、パルセヴァルは漁夫王に遭遇し、聖杯城を訪れることになるが、ゴルマンスの助言に従い、病んだ王や血の滴る槍などを目の当たりにしても問い掛けをせず、翌朝、聖杯城を後にする。
 その後、パルセヴァルは、夫(騎士)の亡骸を抱いて涙する女性と遭遇する。彼女が近い親族だと分かるが、聖杯城で問い掛けをしなかったことを咎められ、母の死を知らされる。彼女の夫を斃した騎士が向かった方向を教わると、仇を取るべくその方向に向かうが、パルセヴァルは、みすぼらしい身なりをして弱った軍馬に乗っている女性を見つける。彼女はパルセヴァルが旅に出てほどなく強引に接吻をし、指輪を奪った女性で、夫からそのことであらぬ疑いをかけられ、制裁を加えられていたのであった。ほどなくその場へ現れた夫とパルセヴァルとの間で一騎打ちとなり、パルセヴァルは勝利を収め、敗北した夫をアーサー王のもとへと送る。
 アーサー王はパルセヴァルの行方を求めて一群の騎士達と旅に出て、ある平原に天幕を張っていたが、たまたま近くにパルセヴァルもやって来る。ヴァルヴェン(Valven)に導かれ、パルセヴァルはアーサー王のもとを訪れるが、ある醜悪な風貌の女性が訪れ、パルセヴァルが聖杯城で問いを怠ったことを責め立て、ある戦いが行われることを予告して去ってゆく。
 ところがその折、グランディルブラスィル(Grandilbrasil)という名の騎士がアーサー王の宮廷を訪れ、ヴァルヴェンに主君を殺されたと主張するが、ヴァルヴェンは身に覚えがなく、彼の身の潔白を明かす戦いがカパロン(Kapalon)の王の御前で行われることになる。その後、暫しの間パルセヴァルは表舞台から姿を消し、ヴァルヴェンの冒険が描かれる。
 騎士メリアンデル(Meliander)は育ての親であるサイバス(Saibaz)の長女に恋心を抱いたが、長女は彼に、父サイバツ相手に戦い、武勇の程を見せることを求める。ヴァルヴェンは騎馬試合に参戦し、メリアンデルを打ち負かす。その後、再び旅に出たヴァルヴェンはある騎士から自分の城で宿を取るよう促され、その城へ赴くが、そこは誰もがヴァルヴェンを憎んでいるカパロンの王の城であった。しかし、グランディルブラスィルは、自分は既にヴァルヴェンに宣戦布告をしており、しかも今回は客として訪れているヴァルヴェンを殺しては王の名誉にそぐわないとしてヴァルヴェンに一切危害を加えないよう提言する。王もこれに同意し、ヴァルヴェンは王から暇を得、再び旅に出ることになる。
 ここで再びパルセヴァルが表舞台に戻る。パルセヴァルは教会に行かず、神を顧みなくなって五年の月日が経っていたが、聖金曜日[13] に遭遇した三人の騎士と二十人の女性達を通じて知ったある隠者のもとを訪れる。
 その隠者はパルセヴァルの母方のおじであった。パルセヴァルは隠者のもとで二日間過ごすが、隠者はパルセヴァルの犯した過ちや聖杯について語り、教会へ行き、神に対し謙虚な姿勢でミサを聞くよう諭す。その後、パルセヴァルは善きキリスト教徒として生き、ブランキフルールのもとへ戻り、彼女と結婚し、彼女の国の指導者として人々に好かれ、戦闘では常に勝利を手にし続ける。
 ここまでが『パルセヴァルのサガ』の内容で、クレチアンの作品ではこの後の部分に当たるヴァルヴェンの一連の冒険からなる部分は『ヴァルヴェンの話』として独立している。
 ヴァルヴェンは滞在していた城を出発すると、ある樫の木の下に、重傷を負った騎士が一人横になっており、その傍らで一人の乙女が悲しんでいるのを見つける。彼はその騎士を起こす。その騎士が言うには、道の先の方に、バレドガネ(Baredogane)という名の騎士がおり、自分以外にその騎士と戦って生きて帰った者はいないという。ヴァルヴェンは戻ることを約束し、先へと馬を進める。
 しばらく行くと彼はある城を見つけ、城塞内へと入ってゆくと、美しいが傲慢な乙女がおり、彼女はヴァルヴェンに同行することになる。彼女はヴァルヴェンに対し、散々侮蔑的な言葉を発する。ヴァルヴェンは重傷を負った騎士のもとへ戻ると、薬草の知識を用いて彼を癒すが、騎士は癒えるとヴァルヴェンの馬を奪い去ってゆく。後にヴァルヴェンは彼と戦い、馬を取り戻すが、これを見た傲慢な乙女は黙ってヴァルヴェンから離れる。
 ヴァルヴェンは二人の女王がいる魔法のかけられた城で、石弓から発せられる大量の矢と巨大な獅子の攻撃をかわし、城を魔法から解放する。その後、女王達や侍女達からよくしてもらうが、城の塔から、かの傲慢な乙女がプリンスマス(Prinzmaz)という名の騎士と一緒にいるのを見ると、ヴァルヴェンは女王らの反対を押し切り、乙女のところまでゆき、一騎打ちの末、プリンスマスを打ち負かす。
 その後もヴァルヴェンは傲慢な乙女と旅を続け、二人はある深い川のほとりまで来る。彼女はヴァルヴェンに、川の対岸まで行って花を摘んで来るように言う。ヴァルヴェンは馬で向こう岸まで渡ることに成功する。向こう岸には立派な風貌の騎士がおり、騎士はヴァルヴェンに、何故かの傲慢な乙女と一緒にいたのか、彼女の騎士はどこなのかと尋ね、ヴァルヴェンは事情を説明する。
 するとその騎士が言うには、その乙女は一時期自分の恋人だったという。自分は意志に反してその乙女に同行していたが、彼女が深く愛していた男を殺し、そのことで彼女は自分を非難し、自分と別れ、先にヴァルヴェンが打ち負かした騎士プリンスマスを恋人にしたのだという。ヴァルヴェンとこの騎士は互いに誠意を誓い合う。
 この騎士の名はグリノメラス(Grinomelas)といった。彼はヴァルヴェンがかの城で冒険に成功し、城を魔法から解放したことを知って驚く。目の前にいるのがヴァルヴェンとは知らない彼は、ヴァルヴェンに、城で二人の女王に会わなかったかと訊き、二人はそれぞれアーサー王の母とヴァルヴェンの母だと語る。驚くヴァルヴェンに対し、グリノメラスはさらに、ヴァルヴェンの母は彼女の母とともにこの地に来た折、子を身籠っており、その子どもは今、城中で最も麗しい女性に成長しており、その女性は自分の恋人なのだと語る。彼女はヴァルヴェンの妹に当たるが、ヴァルヴェンは彼女の存在を知らなかった。
 しかしグリノメラスは、自らの父をヴァルヴェンの父に殺され、二人の従兄弟をヴァルヴェンに殺されたため、ヴァルヴェンのことをひどく憎んでおり、それはヴァルヴェンの妹にあたる彼の恋人も同様だという。グリノメラスはヴァルヴェンに、彼女に渡してほしいと指輪を託ける。
 ここでヴァルヴェンは自らの名を明かし、過去の行為の埋め合わせを申し出る。しかしグリノメラスは反対し、日を定めて一騎打ちをすることで同意し、その場にアーサー王の臨席を賜るべく王のもとに使者が送られることになる。
 ヴァルヴェンは馬で川を渡って元の岸へと戻ると、そこには傲慢な乙女がいた。しかし、彼女から傲慢な態度は消え、これまでの態度を謝罪し、乙女は自らがそのような態度を取っていた理由を明かす。彼女はグリノメラスに恋人を殺されて以来、悲しみと動揺に陥り、すべての嗜みを忘れ、どのような愚かな事を言ったりしたりしても気にしなくなってしまったという。彼女はヴァルヴェンに、自分に制裁を加えてほしいと言うが、ヴァルヴェンはそれは望まず、彼らはヴァルヴェンが魔法から解放した城へと向かう。
 ヴァルヴェンは妹の手を取って並んで座り、グリノメラスが託けた指輪を渡す。しかし、彼女はグリノメラスの恋人になると約束したわけではなく、ヴァルヴェンの死を望んでもいないと話す。
 ヴァルヴェンは立ち上がり、自分の席に着くと、その場にいた者達皆が彼を主君と呼ぶ。ヴァルヴェンは一人、嗜みの良い若者を選び、言伝(ことづて)を頼んでアーサー王の宮廷に向かわせるところで物語は終わる(サガでは、この箇所では言伝の内容は記されていないが、ここまでの本作の内容やクレチアン作品の該当箇所の内容を考えれば、ヴァルヴェンとグリノメラスとの戦いを巡る話のことと思われる)。

◎作品の特徴
 本作品の翻案を指示した人物の名は記されていないが、羊皮紙写本版ではホーコン四世が翻案を指示したとの記述がある『イーヴェンのサガ』と同じくクレチアンの作品が原典であることや、クレチアン作品との内容上の類似・相違の程度などから、『パルセヴァルのサガ』もホーコン四世のもとでの翻案か、あるいは少なくともノルウェーの宮廷での翻案の後、アイスランド語に翻案されたのではないかと考えられている。
 また、クレチアン作品との内容上の大きな相違として、特に『パルセヴァルのサガ』冒頭のパルセヴァルの少年時代や両親を巡る記述がクレチアン作品とは大幅に異なる点が挙げられる。クレチアン作品では物語の始まりにおいて、特にペルスヴァルを取り巻く背景事情は説明されないまま彼は館の外へ飛び出し、五人の騎士達と遭遇するという形であるが、『パルセヴァルのサガ』では、彼の両親がこの地に居を構えるようになった経緯から父親の死を経てパルセヴァルの現在の生活に至るまでを簡潔に説明する新しい導入部が加えられている。なお、クレチアン作品では後の母親の語りの中で、ペルスヴァルには二人の兄がいたが、ともに命を落とし、そのショックで父親が亡くなったことが明かされるが、サガにおいてはパルセヴァルに兄がいたとの記述はなく、父親の死の経緯も記されていない。 さらに、『パルセヴァルのサガ』では各章の終りの部分で登場人物の台詞や地の文の中に押韻を踏んだ対句の形で格言様の文句が織り込まれている。原典とされるクレチアンの作品自体、主人公の成長や教育が作品の中心に置かれた作品であったが、こうした文体上の特徴から、本作品の翻案(あるいは写本の書写)の際に作品受容者への教育という面が他の作品にもまして強く意識されていた可能性が指摘されている[14]。(なお、『ヴァルヴェンの話』の方にはこうした文体上の特徴は見られない。)

 

 1.4.短詩(レー、lai)の翻案
 ホーコン四世の指示によりノルウェー語に翻案された作品の中には、いくつかがマリ・ド・フランスの作とされる一群のフランス語による短詩(レー、lai)もあり、それらノルウェー語に翻案された作品群はStrengleikar(『短詩集』)と呼ばれている。上述のように、『短詩集(Strengleikar)』にはアーサー王伝説に題材を取ったマリ・ド・フランスのものとされる『ランヴァル』のノルウェー語翻案である『ヤヌアルの詩』(Januals ljóð)が含まれている。この、『ヤヌアルの詩』を含む『短詩集』は1250年頃のものとされるノルウェー語による写本(ウプサラ大学図書館所蔵 Codex de la Gardie 4-7。ただし、これはフランス語からのオリジナルの翻案ではない)によって今日まで伝えられている。(他にも『短詩集』を伝える写本は6点現存する。そのうち1点は13世紀のものとされるが、他はすべて18~19世紀のもので、6点のうち、特定の作品しか含まないものや断片のみのものなどが多くを占める。)
 さらに、この『短詩集』に含まれている作品の他に、アーサー王伝説に題材を取ったフランス語のレーの翻案では、『短いマントの短詩』(Le lai du cort mantel)が原典とされ、今日アイスランド語による写本によって伝えられている作品『マントのサガ』(Möttuls saga)も元々はホーコン四世の宮廷でノルウェー語に翻案されたものと考えられている。さらに、この『マントのサガ』は後にリームルと呼ばれるアイスランド独自の形態の物語詩へと翻案され、『マントのリームル』(Skikkjurímur)と呼ばれる作品となっている。

 

 1.4.1.『ヤヌアルの詩』(Januals ljóð)
 『短詩集(Strengleikar)』に含まれる作品で、上述のように、マリ・ド・フランスの『ランヴァル』がノルウェー語に翻案されたものであるが、写本に欠葉があるため、マリの作品の4分の3に当たる157行目からの490行分の翻案のみ写本で伝えられている。

◎物語のあらすじ
 写本が欠落している冒頭部分で語られているのは恐らく以下の内容だと考えられている。ある国の王の子息であるヤヌアル(Janual)がアーサー王の宮廷での聖霊降臨祭の祝宴で贈り物を差し出すも、アーサー王からは顧みられず、打ちひしがれたヤヌアルは街を出て川辺の草原までやって来ると、二人の乙女に会う。乙女は彼に、近くの天幕の中にいる彼女らの女主人が彼に会いたがっているといってヤヌアルを招く。女主人はヤヌアルに愛と無制限の金銭面での援助を与えるが、ヤヌアルが彼女の事を絶対に他言しないことを条件として求める。ヤヌアルは同意し、二人はその日は終日、ベッドの中で過ごす。
 この後、本作品の残存部分が始まるが、女主人は、ヤヌアルが自分と話をしたいと思った時には、非難を蒙ることなく人目を忍んで会えるような場所を考えるなら、自分達はすぐに会うことができると言ってヤヌアルを送り出す。ヤヌアルは臣下の者達をもてなしたり、捕らわれの身になった人間を自由の身にしたり、吟遊詩人に金を与えたりし、女主人ともしばしば会う。
 聖ヨハネの前夜祭が終わった後のこと、ヴァルヴェイン(Valuein)とイヴェイン(Jvein)を含む一群の騎士達が塔の下の庭で楽しみに興じていたが、ヤヌアルを連れて来なかったことを悪く思ったヴァルヴェインの提案で彼らはヤヌアルを呼びに行き、ヤヌアルも楽しみの場に赴く。アーサー王妃と侍女達もやって来るが、ヤヌアルは離れた所に座り、彼の女主人への思いに耽っている。王妃はヤヌアルに、彼のことを愛していると告げるが、ヤヌアルは自らの主君の裏切り者にはなりたくないといって丁重に断る。すると王妃は怒って、ヤヌアルは若い少年達と楽しむ方を好んでいるといって非難する。ヤヌアルは強く否定し、自分は称賛と名誉に値するたった一人の女性だけを愛していると言い、自分の女主人の最も賤しい侍女でさえアーサー王妃よりも美しいと言う。怒り涙し、王妃は寝床へ向かう。アーサー王が狩りから戻ると王妃はヤヌアルが彼女を貶したと訴える。ヤヌアルは王妃の愛を求めたが、彼女が拒絶すると、ヤヌアルは自分の女主人を褒め、王妃を女主人の最も賤しい侍女と比べて侮辱したというのである。
 アーサー王は怒り、ヤヌアルを裁判にかけて処刑すると誓う。ヤヌアルはもはや女主人に会えなくなったことを知り、落胆する。ヤヌアルはアーサー王に対し、自分は決して王の名誉を毀めたりはしていないと言って弁明する。ヴァルヴェインとその友人達は、ヤヌアルが出廷することを保証すると誓う。裁きの日となり、審議が行われるが、裁きの場へ二度にわたって見目麗しい乙女達が二人ずつやって来て、その都度自分達の女主人のための部屋を用意してほしいと頼む。最後にヤヌアルの女主人が見事な馬に跨って登場し、王の前でヤヌアルが王妃に愛を乞い求めたとの王妃の訴えは虚偽であることを言明し、女主人の美しさを巡ってヤヌアルが自慢した内容が真実であることが彼女の美貌によって明らかとなり、ヤヌアルは無罪となる。ヤヌアルは馬上の女主人の後ろに飛び乗り、二人はアヴァロン(Avalon)へ向かって走り去り、その後、二人の消息が聞かれることはない。

◎作品の特徴
 物語の内容は基本的にはフランス語原典を踏襲しているが、相違点も存在する。フランス語原典ではランヴァル(ヤヌアル)に対する裁きの場で、裁きに携わる伯爵の台詞として、裁判上の手続きに関するやや長めの記述があるが、これはノルウェー語作品では省略されている。また、フランス語原典と比べ、王妃がヤヌアルについて王に訴える際の感情はトーンダウンしており、一方でヤヌアルの女主人が裁きの場へやって来てヤヌアルの冤罪について訴える際の台詞については、フランス語原典には存在した「今やおわかりのとおり、お妃さまが間違っているのです。(これは『ランヴァル殿は言いよりませんでした』と言う前の発言であり、『今やおわかりのとおり』とは、『この場でアーサー王妃と自分の風貌を比較してみておわかりのとおり』の意と思われる)」「彼が口をすべらした自慢の話も、この私を御覧になって得心がゆかれましたら」といった、その場にいるアーサー王妃を毀める発言はノルウェー語作品には存在せず、さらにノルウェー語作品には「私は自分の発言によってどなたも傷つけたくはありません」といった、女主人がアーサー王妃を含む他者への配慮を示す台詞が加わっている。

 

 1.4.2.『マントのサガ』(Möttuls saga)
 フランス語作品『短いマントの短詩』(Le lai du cort mantel)がホーコン四世のもとでノルウェー語に翻案されたものであるが、ノルウェー語の写本は遺されていない。

◎写本について
 『マントのサガ』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM179 fol.(17世紀)
AM181b fol.(1650頃)
AM588h 4to(17世紀後半)
AM588i 4to(17世紀後半)
AM598 Iα 4to(1400年頃)羊皮紙、一葉
AM598 Iβ 4to(1300年頃)羊皮紙、一葉
AM238 8vo(19世紀前半)

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵
Ny kgl. saml. 1144 fol.(18世紀)要約
Ny kgl. saml. 1708 4to(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 3310 4to(19世紀)不完全
Ny kgl. saml. 1685b I 4to(19世紀、P. E. Müller)要約(二頁)
Kall246 fol.(18世紀後半)
Thott1768 4to(17世紀後半)

・大英図書館(ロンドン)所蔵
BL Add. 4859 fol.(1693年-1696年)
BL Add. 11.158 4to(1764年頃)要約

・アイスランド国立・大学図書館(レイキャヴィーク)所蔵
Lbs 661 4to(1843-48年)
Lbs 1907 8vo(1860-70年)

・スウェーデン王立図書館(ストックホルム)所蔵
Perg. 4:o nr 6(1400年頃)羊皮紙 二葉
(二葉目の途中で本作は終わり、他作品『クラウルスのサガ』(Clárus saga)が始まる)

この作品を伝える写本群は二つのグループに大きく分けられ、一つは1300年頃のものとされるアイスランド語写本の一葉のみの断片AM598 Iβ 4toによって代表されるグループで、もう一つは、1400年頃のものとされ、『イーヴェンのサガ』や『パルセヴァルのサガ』も含むStockholm6(ただし、『マントのサガ』を伝える部分は二葉しか遺されておらず、二葉目の途中で本作は終わり、他作品『クラウルスのサガ』(Clárus saga)が始まる)や、1400年頃のものとされ、もともとはStockholm6の一葉だったとされる断片AM598 Iα 4to(一葉のみ)、およびStockholm6における本作を伝える部分がまだ無傷であった頃にStockholm6から書き写されたと考えられ、作品を完全な形で伝えているAM179 fol.等によって代表されるグループである。

◎物語のあらすじ
 アーサー王は聖霊降臨祭の祝宴を行う予定で、各国から名だたる王侯貴族らが客がとしてやって来る。食事が整うが、王は何か大きな出来事が起こるかその知らせが来るかしなければ食事には取り掛からない。そこへ一着の美しいマントを持った一人の若者がやって来る。このマントは魔力が織り込まれたもので、これを身に纏う女性が夫や恋人に誠実だった者でなければ、その不貞に応じてマントが極端に伸びたり縮んだりして背丈に合わなくなるというもので、アーサー王妃から始まり、この場にいる女性達は皆試着しなければならなくなるが、王妃を含め、どの女性の場合もマントは長くなりすぎたり短くなりすぎたりして大きさは合わず、その恋人および夫の男性達は皆驚く。最後に、体調が悪くて上階の部屋に残っていた一人の乙女が見つかり、彼女が祝宴の場に下りてきてマントを試すと、大きさはピッタリと合い、マントは彼女に与えられる。その後、彼女とその恋人の騎士はアーサー王の宮廷を去る。

◎作品の特徴
 作品冒頭に、アーサー王を称賛する作者による地の文での長いコメントがあるが、これはフランス語原典にはない。それだけに、サガではこの地の文での作者によるコメントと、この後に明らかとなる女性達の不貞の様との対比がより印象付けられる。

 

 1.4.3.『マントのリームル』(Skikkjurímur)
 恐らくは15世紀にアイスランドにおいて、上述の『マントのサガ』を基に著されたと考えられているリームル(rímur)と呼ばれる物語詩である。

◎写本について
 本作を伝える写本としては、以下の三点が現存している。

・アウグスト公図書館(ヴォルフェンビュッテル)所蔵
Codex Guelferbytanus 42.7 Augusteus 4to(1470-80年)

・アルナマグネア研究所(レイキャヴィーク)所蔵
AM Acc. 22(1695年?)

・スウェーデン王立図書館(ストックホルム)所蔵
Papp. 4to nr15(17世紀)

なお、アルナマグネア研究所(レイキャヴィーク)所蔵の写本AM603 4to(16世紀)には、もともとは本作も含まれていたが、その本作を伝える部分は失われてしまっている。

◎作品の特徴
 物語内容は基本的には『マントのサガ』を踏襲しているが、いくつかの点で改変が加えられている。まず、アーサー王宮廷での祝宴にやってきた客を紹介する描写について、『マントのサガ』では具体的な客を個別に紹介する記述はないが、『マントのリームル』ではこうした記述が存在し、その具体的な客の名は『エレクスのサガ』におけるエレクスとエヴィダの結婚の祝宴への多くの出席者の中から借用されている。また、女性達が次々とマントを試着する場面の記述についても、試着をする具体的な女性の名前の中に、客として祝宴に訪れている具体的な他国の君主達の夫人の名も登場している。
 さらに、最後にマントが合う女性が見つかった後、アーサー王は不貞が明らかとなった女性達全員の宮廷からの追放を宣言し、男達に対し、自分達はもっと良い女性達を見つけるべきだと語る。

 

 1.5.トリスタン物語に題材を取った作品群
 トマの『トリスタン』はホーコン王がノルウェー語への翻案を指示した最初の作品だと考えられている。作品はさらにアイスランド語に翻案されたと考えられ、『トリストラムとイーセンドのサガ』と呼ばれる作品となって今日まで伝えられているが、本作のアイスランドでの影響力は大きく、既述のように、作品中のモチーフは、アイスランドで独自に創られた騎士のサガ作品や他ジャンルのサガにも取り込まれたりするほどであった。
 そして、14世紀、あるいは1400年頃にアイスランドで著された作品と考えられているが、トリスタン物語に題材を取った作品として『トリストラムとイーソッドのサガ』と呼ばれる作品が登場する。他にトリスタン物語に題材を取ったものとしては、『短詩集(Strengleikar)』に含まれる作品で、マリ・ド・フランスの作とされる『すいかずら(Chèvrefeuille)』のノルウェー語への翻案『すいかずら(Geitarlauf)』、さらに、アイスランド語のバラッド作品『トリストラムのバラッド』(Tristrams kvæði、15世紀初頭?)も存在する。

 

 1.5.1.『トリストラムとイーセンドのサガ』(Tristrams saga ok Ísöndar)
 上述のように、1226年にホーコン四世のもとで修道士ロベルト(Robert)によってノルウェー語に翻案され、その後さらにアイスランド語へと翻案されたものと考えられているが、ノルウェー語による写本は遺されておらず、アイスランド語による写本しか伝えられていない。
 多くのヨーロッパの言語圏に広まっているトリスタン物語には、それぞれ「流布本系」、「宮廷本系」と呼ばれるグループに含まれるものに加え、「散文トリスタン物語」が存在するが、ここで取り上げる『トリストラムとイーセンドのサガ』(以下『イーセンドのサガ』とする)は、今日、宮廷本系のトリスタン物語を完全な形で伝える唯一の作品である。
 宮廷本系とは、トマによるフランス語の作品(1170年代前半?)から派生したと考えられる作品群で、ドイツ語圏のゴットフリート・フォン・シュトラースブルク(Gottfried von Straßburg)による『トリスタンとイゾルデ』(Tristan und Isolde、1210年頃)、英語圏の『トリストレム卿』(Sir Tristrem、13世紀末?)、そしてこの北欧語圏における『イーセンドのサガ』は、いずれもトマの作品が各言語に翻案されたものと考えられている。
 しかし、トマの作品は末尾近くの部分が複数の写本によってごく断片的に伝えられているのみで、ゴットフリートの作品は未完であり、『トリストレム卿』については、作品を伝える唯一の写本の末尾部分が欠落している。そのため『イーセンドのサガ』は、今日、トマの作品に派生する宮廷本系のトリスタン物語を完全な形で伝える唯一の作品として重要視されている。

◎写本について
 『イーセンドのサガ』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM567 4to XXII(15世紀後半)羊皮紙、三葉
AM543 4to(17世紀)
AM576b 4to(1700年頃)要約

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵
Ny kgl. saml. 1144 fol.(18世紀後半)要約

・アイスランド国立・大学図書館(レイキャヴィーク)所蔵
Lbs4816 4to(1800年)
JS8 fol.(1729年)
ÍB51 fol.(1688年頃)

・アメリカ議会図書館(ワシントン D. C.)所蔵
Reeves Fragment(15世紀後半)羊皮紙、一葉
(William Dudley Foulke Papersに含まれる)

上述のように、修道士ロベルトによって翻案されたノルウェー語の写本は現在では遺されておらず、今日まで作品を伝えているのは8点のアイスランド語による写本のみであるが、それらについても比較的早い時期のものは断片によってしか遺されておらず(三葉のみが遺されている15世後半のAM567 4toと、同じく15世紀後半の一葉のみのReeves Fragmentと呼ばれるもの)、作品を完全な形で伝えているのはいずれも17世紀のものとされる二点の紙写本のみ(AM543 4toとÍB51 fol.)である。
 しかし、トマの作品の残存断片と『イーセンドのサガ』の15世紀の羊皮紙断片、そして『イーセンドのサガ』を完全な形で伝える17世紀の紙写本との間で共通して残存している部分を照合すると、トマの作品とサガの羊皮紙断片との間では共通している記述の中で、サガの紙写本では省略されている箇所があることから、『イーセンドのサガ』の当初のノルウェー語への翻案は、紙写本で伝えられる内容よりももっとトマの原典に忠実なものだったのではないかと推測されている。

◎物語のあらすじ
 物語はトリストラム(Tristram)の両親のエピソードから始まる。武勇、容貌ともに抜群のブルターニュ(Bretland)の騎士カネラングレス(Kanelangres)はイングランド(England)のマルキス(Markis)王のもとを訪れる。カネラングレスの騎馬試合での活躍を見たマルキス王の姉妹ブレンスィンビール(Blensinbíl)とカネラングレスは互いに恋心を抱くようになり、それは王の知るところともなるが、ある馬上試合でカネラングレスは重傷を負う。ブレンスィンビールは彼のもとを訪れ、交わり、彼女に子が宿る。その後カネラングレスは治療により回復するが、自国がブルターニュ人に侵攻されたとの知らせを受け、彼はブレンスィンビールとともにブルターニュへ帰る。二人は正式の結婚式をあげるが、カネラングレスは戦死し、ブレンスィンビールは悲しみのうちに子を産み落として事切れる。
 家令のロウアルドゥル(Róaldr)はその子どもに洗礼を受けさせ、トリストラム(Tristram)と名付け、わが子として養育するが、ある日、トリストラムはノルウェーの商人に誘拐される。イングランドに置き去りにされたトリストラムは、マルキス王に仕え、トリストラムを探して旅してきたロウアルドゥルとも再会する。ブルターニュに帰国して父の仇を討った後、再びマルキス王のもとへ戻る。トリストラムは、アイルランド(Írland)から貢を求めに来ていたアイルランド王の義兄弟モウルホルド(Mórhold)と戦い、モウルホルドを斃すが、トリストラムも毒の塗られた剣で負傷する。敵国アイルランドで治療を受け、王女イーセンド(Ísönd)に弦楽器や手紙の書き方を教える。正体がばれるのを恐れて一旦帰国するが、マルキス王の結婚相手としてイーセンドを得るべく再びアイルランドへ向かい、住民を悩ませていた龍を退治する。トリストラムの正体は露見するが、和解に至り、イーセンド はマルキス王の妃となることが決まる。トリストラムはイーセンド、侍女のブリングヴェット(Bringvet)を連れてイングランドへ向かう。しかし、マルキス王とイーセンドが新婚初夜に一緒に飲むべく用意されていた媚薬を、トリストラムとイーセンドは誤って船上で一緒に飲む。二人の間に激しい恋の炎が燃え上がる。
 イングランド到着後、イーセンドは口封じ目的で奴隷にブリングヴェットを殺させようとするが、未遂に終わる。やがて王の家令マリーアドック(Maríadokk)に不倫の事実をつかまれる。真相を暴こうとする王やマリーアドックらと、様々な策でそれらをかわし、逢い引きを重ねるトリストラムとイーセンド。王も二人への疑いを抱いたり捨てたりを繰り返す。二人は偽装工作を行った上で熱鉄の裁きを乗り切る。ついに二人は一旦王に宮廷から追放されるが、再び二人への疑いを捨てた王に呼び戻される。しかし、ついに王自らが二人の不倫場面を目撃する。
 トリストラムは宮廷を去り、様々な国を遍歴した末、ブルターニュへ向かう。当時この国を支配していたのは老齢の公爵であったが、その長男カルディーン(Kardín)と親友になる。トリストラムは王妃イーセンドを忘れることができるかと思い、カルディーンの妹イーソッド(Ísodd)と結婚するが、彼女と肉体関係は持たない。やがてトリストラムはある巨人の造った岩屋に王妃イーセンドやブリングヴェットとそっくりに造った像を置かせる。後にカルディーンを岩屋に案内し、カルディーンはブリングヴェットに恋心を抱く。トリストラムとカルディーンは変装してイングランドへ赴き、イーセンド、ブリングヴェットと会う。帰国後、トリストラムは小人のトリストラム(Tristram dvergr)という者の依頼で戦い、百名以上の敵が斃れたが、トリストラムも毒の塗られた剣で重傷を負う。トリストラムはカルディーンに、イングランドへ向かい、王妃イーセンドを呼び寄せるよう依頼するが、その時の会話を妻イーソッドに聞かれる。カルディーンはイングランドの宮廷に着き、トリストラムの指輪を証拠として見せ、王妃イーセンドに事情を話す。カルディーンは王妃イーセンドを伴い出航する。船はイーセンドが一緒であることを示す青と白の縞模様の帆を掲げていたが、トリストラムの妻イーソッドは彼に、王妃のイーセンドが一緒でないことを示す黒い帆を掲げていると嘘を告げ、絶望したトリストラムは息絶える。やがて到着したイーセンドは二人の愛や悲しい別れについてたくさん語り、それから床に伏せって彼に接吻をし、両手を彼の首にまわして息絶える。トリストラムの妻イーソッドは二人が死後も近くにいられないよう、二人の亡骸をそれぞれ教会の別の側に埋葬させたと言われているが、樫か何かの木が双方の墓から生えてきて高く伸び、教会の屋根の上で一つに絡まる。

 

 1.5.2.『トリストラムとイーソッドのサガ』(Saga af Tristram ok Ísodd)
 一方で、同じくトリスタン物語に題材を取り、14世紀、あるいは1400年頃にアイスランドにおいて著されたと考えられている作品で、『トリストラムとイーソッドのサガ』(以下『イーソッドのサガ』とする)と呼ばれる作品がある。

◎写本について
 『イーソッドのサガ』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM489 4to(1450年頃)羊皮紙

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵
Ny kgl. saml. 1745 4to(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 3310 4to(19世紀)

・アイスランド国立・大学図書館(レイキャヴィーク)所蔵
Lbs2316 4to(1850年頃)

・ジョン・ホプキンス大学(ボルチモア)所蔵(Nikulás Ottenson Collection)
MS. Nr. 1(18世紀後半)

このように、本作品は現在5つの写本によって伝えられているが、そのうち、AM489 4toは1450年頃のもので、他の4点はすべて18世紀以降のものである。なお、AM489 4toはAM489 I 4toとAM489Ⅱ4toからなり、AM489 I 4toにはアイスランド人のサガに属する『スナイフェトゥルの守護神バウルズルのサガ』(Bárðar saga Snæfellsáss)や騎士のサガに属する『キリアラクスのサガ』(Kirialax saga)が含まれ、AM489Ⅱ4toには本作『イーセンドのサガ』の他、『フリングルとトリッグヴィのサガ』(Hrings saga ok Tryggva)、『フロウレスとブランキフルールのサガ』(Flóres saga ok Blankiflúr。フランス語原典のノルウェー語翻案。ノルウェー語写本(断片)、およびアイスランド語写本で伝わる)、『イーヴェンのサガ』が含まれており、これらの作品はいずれも騎士のサガに属するものである。

◎作品の特徴
 この『イーソッドのサガ』は『イーセンドのサガ』と比べ、人物や物語の非常に基本的な内容こそ合致しているものの、分量は大幅に少なく、その内容は様々な点で大幅に異なっており、『イーセンドのサガ』のパロディーとの解釈も存在する。
 と言うのも、例えば主人公トリストラムによる伯父のモウロッド王(Mórodd王、『イーセンドのサガ』のマルキス王にあたる)のための代理求婚の旅の帰途、媚薬を飲んで相思相愛の仲になったトリストラムとイーソッドがイングランドに到着し、モウロッド王が二人を迎えると、モウロッド王はトリストラムにイーソッドを娶るように勧め、年齢からすれば、それがよりめでたいことだと言い、イーソッドともども国までトリストラムに与えようとする。また、これはトリストラムが生まれる前の話であるが、後にトリストラムの母となるブレンスィブリー(Blenziblý) は、トリストラムの父となるカレグラス(Kalegras)の騎士としての活躍ぶりを見てカレグラスに惚れ込む。彼女はそれまでの恋人であった騎士プレグルス(Plegrus)をカレグラスに決闘で斃されているにもかかわらずである。ブレンスィブリーは使者を送ってカレグラスを自分の私室に来させると、二人は私室の中で抱き合ったきり、誰かが来て話しかけても二人から返事の言葉は得られず、カレグラスの父が戦闘で落命した知らせを受けるまでの三年間、二人は私室から一歩も外へ出ることがない。また、『イーセンドのサガ』においてトリストラムがノルウェーの商人に誘拐されるエピソードは『イーソッドのサガ』ではトリストラムは、海賊でもある王トゥールネス(Túrnes)によって一旦攫われ、その後さらに、トゥールネスが最も低級だと思う海賊に法外な額で売り払われるという形に改変されているが、買い取ったものの、何を尋ねても一言も答えないトリストラムに業を煮やした海賊達はトリストラムを拳や棒で殴ったり丸坊主にするなどの虐待を加えた後、モウロッド王の治めるイングランド近くの岩礁に置き去りにするが、彼がそこから泳いで上陸した際、地の文で、「海賊達が彼を虐待していたので、(トリストラムにとって)濡れた髪の毛の水を絞り出すのは楽であった。なぜなら髪の毛はなかったからだ」と、やや滑稽な印象を与える形で記されている。このような箇所に基づき、この『イーソッドのサガ』は、伝統的なトリスタン物語の内容を踏襲した『イーセンドのサガ』のパロディー作品との解釈がなされたが 、[15]この『イーソッドのサガ』における個々の人物の言動や人物同士の人間関係を見て行くと、パロディーとは異なる一面が見えてくる。
 まずトリストラムとモウロッド王の関係であるが、『イーソッドのサガ』では『イーセンドのサガ』の場合と比べ、トリストラムとモウロッドのいずれについても、その言動は、特にイーソッドを巡って、より相手の望むところが叶いやすくなるものとなっており、互いの関係がより悪化しないよう、より良好な状態に保たれるよう描かれている。
 まずトリストラムの側から見てゆくと、トリストラムは繰り返し、イーソッドと結婚するように勧められる。一度目は彼女の母から、二度目はイーソッド自身から、そして最後にはモウロッド王からである。しかしトリストラムは一貫してイーソッドとの結婚を断る。最初にイーソッドの母から勧められた時には、トリストラムは具体的に、イーソッドがモウロッド王のもとへ嫁ぐことを勧める。
 また、イングランドがフールスス(Fúlsus)という名の王とその軍勢に侵略された折、トリストラムはフールススに立ち向かっていくが、トリストラムの軍の主要部分が斃れ、望み薄となると、トリストラムは勝利が得られるよう、イーソッドとの恋愛関係を止めることを神自身に誓約することにする。その後、イーソッドが神明裁判によって「夫以外に彼女の傍に来たのはかの(トリストラムが変装した)『乞食』のみである」ことが明らかにされると、トリストラムは国を去る。
 さらにトリストラムは国を去った後、スペインの地で「黒のイーソッド」(Ísodd svarta、『イーセンドのサガ』ではÍsoddとあるのみ)を妻とするが、『イーセンドのサガ』ではトリストラムはイーソッドとは一切の性交渉を持たないのに対し、『イーソンドのサガ』では彼は黒のイーソッドとの間に一男をもうけ、カレグラスと名付けられる。王妃イーソッドに対するトリストラムの思いが『イーセンドのサガ』におけるほどではないことのあらわれとも解釈できる。
 そしてモウロッド王の側について言えば、モウロッド王がイーソッドと国をトリストラムに譲ろうとする点については先に述べた通りであるが、さらに、宮廷人の一人ヒェリ(Héri)が王に、トリストラムが夜にイーソッドのベッドへ行っていると告げ、床に小麦粉を撒いておくことを提案し、そうしたところ、翌朝ヒェリに促された王は小麦粉にトリストラムの足跡を認めるが、王はトリストラムに良からぬ意図があったとは考えず、自分がいない間、トリストラムはイーソッドを楽しませようとしているのだろうと述べるにとどまる。『イーセンドのサガ』ではトリストラムとイーセンドの秘め事を知らされた王がひどく悲しみ、心痛に苛まれるのとは異なる。
 もっとも、『イーソッドのサガ』でも上記の王の台詞の後、王はトリストラムを別の部屋で寝させるようにし、またトリストラムとイーソッドが逢引しようとするところを木の上から待ち伏せしたりするなど、『イーセンドのサガ』と同様、王がトリストラムとイーソッドの関係に疑念を抱き、真相を探ろうとするエピソードが続く。そして、とうとう王はトリストラムがベッドでイーソッドの傍らに横になっているのを見つけると、もはや王は良からぬ事態を信じないわけにはいかず、二人をある洞窟へと追いやるが、王は後に自ら洞窟に出向き、彼らの間の不倫が事実ではないことが確かだと思うと、王は自分と一緒に彼らを連れて宮廷へと帰らせ、再び彼らによくしてやる。
 その後、上述のようにフールススという名の王とその軍勢に国が侵略され、トリストラムがフールススの軍勢に勝利すると、王はトリストラムに感謝する。そしてトリストラムが王の元を去った後、最後に王はトリストラムとイーソッドの死を知ると、王は大きな悲しみに耐え、スペインからトリストラムの息子カレグラスをイングランドに呼び寄せ、王は議会を経てトリストラムの息子カレグラスにイングランドと王位を与える。王自身はエルサレムへと出発し、そこで庵室の中で、全能の神に呼ばれるのを待つ。トリストラムとイーソッドの死後の王のこうした行動は『イーセンドのサガ』には存在しない。
 このように、『イーソッドのサガ』では『イーセンドのサガ』の場合と比べ、トリストラムとモウロッド王のいずれについても、その言動は、特にイーソッドを巡って、より相手の望むところが叶いやすくするようなものになっており、互いの関係がより悪化しないよう、より良好な状態に保たれるよう描かれている。
 イーソッドの人物像についても、『イーセンドのサガ』と比較した際に明確な特徴が見られる。問題となるのは、トリストラムが自分のおじ(『イーセンドのサガ』ではモウルホルドMórhold、『イーソッドのサガ』ではエングレスEngres)を斃した人間であることが判明したことに対する彼女の態度であるが、『イーソッドのサガ』のイーソッドは、『イーセンドのサガ』のイーセンドの場合と比べ、怒りや悲しみを忘れ、殺人者のトリストラムを許すまでの過程が早まっており、さらには彼を夫に得ようとするまでになる。(『イーセンドのサガ』ではイーセンドがトリストラムに対して恋愛の情を抱いたことを示す記述があらわれるのは、二人が船上で媚薬を飲んでからである。)さらに王妃となってからは、『イーセンドのサガ』では自らとトリストラムとの関係が露見するのを恐れ、口封じのために、二人の奴隷を使って侍女のブリングヴェットを殺させようとするが、この箇所は『イーソッドのサガ』ではあくまでイーソッドはブリーングヴェン(Bríngven)が自らに忠実であるかどうかを知ろうとしたのみで、殺させるつもりはなかったという形に変更されている。
 また、このことと関連して、『イーセンドのサガ』でのブリングヴェット殺害を命じた奴隷達に対するイーセンドの矛盾した言動が、『イーソッドのサガ』では削除されている。『イーセンドのサガ』ではイーセンドは二人の奴隷にブリングヴェット殺害を命じた後、実際にはブリングヴェットを殺さなかった彼らから「彼女を殺害した」との報告を受け、ブリングヴェットが彼らにことづけた内容を聞かされると一転、彼らにブリングヴェットの死の復讐をすると言って非難し、彼らの一人が森からブリングヴェットを連れて来るが、『イーソッドのサガ』では奴隷達がまさにブリーングヴェンを殺そうとしたところへイーソッドがやってきて殺害を止めさせ、ここで上述のように、あくまでイーソッドはブリーングヴェンが自らに忠実であるかどうかを知ろうとしたのみで、殺させるつもりはなかったことが地の文で明かされる。少なくともこうした改変そのものはパロディーとの印象を与えるものではない。
 なお、『イーセンドのサガ』ではマルキス王の妃はイーセンド(Ísönd)、トリストラムの妻となる女性はイーソッド(Ísodd)と、二人は名前が異なるが、『イーソッドのサガ』ではモウロッド王の妃とトリストラムの妻はともにイーソッド(Ísodd)という名で、しかもモウロッド王の妃はしばしば麗人イーソッド(Ísodd fagraまたはÍsodd hin fagra)と呼ばれ、トリストラムの妻は黒のイーソッド(Ísodd svarta)と呼ばれている。

 

 1.5.3.『すいかずら』(Geitarlauf)
 『短詩集(Strengleikar)』に含まれ、マリ・ド・フランスのものとされる『すいかずら(Chèvrefeuille)』がノルウェー語に翻案されたもので、トリスタン物語に題材を取ったものである。
 『すいかずら(Chèvrefeuille)』の比較的忠実な翻案で、物語は以下のとおりである。

◎物語のあらすじ
 ティストラム(Tistram)はマルヘス(Marhæs)王の妃に恋をしたため国を追われ、故国である南ウェールズに戻って一年が経ったが悲しみは募り、王妃のいるコーンウォールに赴く。聖霊降臨の日にティンタイオル(Tintaiol)で王が祝宴を開くことを知ると、ティストラムは、王妃が通って来るとわかっている森の中の道に、王妃へのメッセージを彫り込んだ、ハシバミの木の断片を削って作った杖を立てておく。かつて同様の方法で彼女に気付いてもらえたことがあったからである。メッセージの内容は、自分と王妃の愛をハシバミとそれにまきつくスイカズラに譬えたものであった。
 やがて王妃が随行の騎士達とともにやって来るが、王妃は杖に気付き、彫り込まれていたメッセージを読むと、騎士達にはその場で待つように言い、馬を降り、侍女のブレングヴェイン(Brengveinn)だけを連れて道から遠く離れたところまでやって来て、ティストラムと会う。
 王妃はティストラムに、王と和解する術を伝える。また彼女は王が、ティストラムを追放したのは邪悪な人間に唆された故だと後悔していることも伝える。
 やがて二人は涙ながらに別れ、ティストラムは、王が彼を呼び戻し、怒りを捨ててくれるまでウェールズに留まる。
 ティストラムは王妃と再会できた喜びゆえに、また彼女の言葉を記憶しておくために、短詩(レー、lai)を作る。最後に地の文で「この短詩をイングランド人はgotulæf、フランス人はchæfrefuillと呼び、我々はGeitarlaufと呼んでいる」との記述がある。

 

 1.5.4.『トリストラムのバラッド』(Tristrams kvæði)
 トリストラム(Tristram)が「異教徒の犬」との戦いで負った負傷により息を引き取るまでを描くバラッドである。17世紀以降の写本によって遺されているが、15世紀初頭ないしは1400年頃の作と考えられている。
 本作品はA、B、C、Dの異なる4種類のヴァージョンが確認されており、Aヴァージョンは33スタンザ(版によっては32スタンザ)、BヴァージョンとDヴァージョンはともに22スタンザ、Cヴァージョンは30スタンザから成り立っている。各スタンザは四行の詩行の後、一行のリフレインがある形で、A、C、Dの各ヴァージョンではリフレインは「彼らは別れの他は運命づけられてはいなかった(Þeim var ekki skapat nema skilja)」というものであるが、Bヴァージョンだけはリフレインが「そして、彼女の傍で眠る者は幸せである(Og er sá sæll sem sofna náir hjá henni)」となっている。

◎物語のあらすじ
 トリストラム(Tristram)は「異教徒の犬」相手の戦いで傷を負う。多くの医者が治療すると申し出るが、トリストラムは、「輝きのイーソッド」(Ísodd bjarta)を呼んで来てもらうべく使者を送る。その際、輝きのイーソッドが一緒に来る場合には青い帆を、そうでない場合には黒い帆を掲げるよう指示する。輝きのイーソッドのもとに到着した使者達は輝きのイーソッドに、トリストラムが会いたがっている旨を伝える。トリストラムを治癒させたいかとの彼女の問いに対し、当初、夫王は、トリストラムは死ぬ運命にあるのだからと言って、否定的な返事をするが、その後、王の考えは変わる。王は、彼女がトリストラムに会った後、無事に帰って来ることがわかっているなら、トリストラムによくなってもらいたいのだがと答える。輝きのイーソッドは、自分が無事に戻って来られるかどうかは神次第だと答える。
 輝きのイーソッドを乗せた船は青い帆を掲げて出発し、順風に恵まれ、三日間かけてトリストラムの国に到着する。しかし、トリストラムの国では外に立っていた黒のイーソッドが二度にわたり、帆は黒だと言い、それを聞いたトリストラムは悲しみのあまりこと切れる。
 輝きのイーソッドは上陸すると、歌声と鐘の音(ヴァージョンによっては笛の音)を耳にする。彼女は教会へ向かうと、蝋燭を手にした僧達が立っている。彼女はトリストラムの亡骸の上に屈みこみ、息絶える。
 黒のイーソッドは、二人は死してなお一緒にいることはならないと言う。しかし、二人が埋葬された後、各々の墓から木が生え出て、教会の建物の中央の上で絡み合う。

◎作品の特徴
 本作品には『イーセンドのサガ』には見られない『イーソッドのサガ』との類似点が存在する。それは、本作では王の妃とトリストラムの妻はともにイーソッドと同じ名前で、しかも王妃は輝きのイーソッド(Ísodd bjarta)、トリストラムの妻は黒のイーソッド(Ísodd svarta)と呼ばれている点について、『イーセンドのサガ』ではマルキス王の妃はイーセンド(Ísönd)、トリストラムの妻となる女性はイーソッド(Ísodd)と、二人は名前が異なるが、『イーソッドのサガ』ではモウロッド王の妃とトリストラムの妻はともにイーソッド(Ísodd)という名で、しかもモウロッド王の妃はしばしば麗人イーソッド(Ísodd fagraまたはÍsodd hin fagra)と呼ばれるのに対し、トリストラムの妻は黒のイーソッド(Ísodd svarta)と呼ばれており、本作『トリストラムのバラッド』のケースと類似性が見られるという点である。
 この『トリストラムのバラッド』と『イーソッドのサガ』のどちらが先行する作品であるのかについて、『トリストラムのバラッド』の方が先で『イーソッドのサガ』が『トリストラムのバラッド』から影響を受けたとする説(『イーソッドのサガ』は14世紀、あるいは1400年頃の作と考えられているため、この場合、『トリストラムのバラッド』は現存するアイスランドのバラッドの中で最古のものということになる)と、逆に『イーソッドのサガ』の方が先であったとする説の両方が存在する。

 

 1.6.『ブリトン人のサガ』(Breta sögur)と『メルリーヌースの予言』(Merlínússpá)
 ジェフリー・オブ・モンマス(Geoffrey of Monmouth)の『ブリタニア列王史』(Historia regum Britanniae)に含まれることになる『メルリヌスの予言』(Prophetiae Merlini)のアイスランド語への翻案である『メルリーヌースの予言』(Merlínússpá)と呼ばれる作品(1200年頃)は北欧における最初のアーサー王伝説を扱ったテクストの翻案と考えられており、『ブリタニア列王史』のアイスランド語への翻案『ブリトン人のサガ』(Breta sögur)についても恐らくは同時期にアイスランドで生まれたものと考えられている。アイスランドではこれらの作品が生まれる時期には「王のサガ」と呼ばれるノルウェー王の伝記や、アイスランドへの定住から社会規範の確立、キリスト教への改宗とその結果に至るまでの個人やその家族の生活を描いた「アイスランド人のサガ」と呼ばれる作品群などが生まれており、このようなアイスランド人の歴史への関心ゆえにジェフリーの『ブリタニア列王史』のような作品が彼らの興味を惹いたのは不思議ではないと考えられている。
 『メルリーヌースの予言』は1200年頃に当時のアイスランド北部における写本生産拠点であったシングエイヤル(Þingeyrar)のベネディクト会修道院にてグンロイグル・レイフソン(Gunnlaugr Leifsson)によって翻案されたと考えられている。なお『メルリーヌースの予言』にはジェフリーの『ブリタニア列王史』における『メルリヌスの予言』の前の巻の内容も一部含まれており、グンロイグルは『ブリタニア列王史』を知っていたか、あるいは『ブリタニア列王史』を側に置いて『メルリヌスの予言』の翻訳を行っていた可能性がある。また、『メルリーヌースの予言』は二つの詩から構成される形になっているが、ジェフリーの『メルリヌスの予言』に対し、内容の前半と後半の順序が逆になっている。
 『ブリトン人のサガ』は基本的にはジェフリーの『ブリタニア列王史』全編の翻案であり、『ブリタニア列王史』に比べ、省略、縮約された箇所が多いが、付加および他の原典の内容によって代用された箇所も存在する。『ブリトン人のサガ』も『メルリーヌースの予言』と同時期にアイスランドにおいて翻案されたとの見方が有力であるが、『メルリーヌースの予言』と同様にグンロイグル・レイフソンが翻案者であるかどうかは断言はできない。

◎写本について
 『ブリトン人のサガ』を今日まで伝えるのは以下に挙げる写本群である。特に断りのない限り、紙写本である。

・アルナマグネア研究所(コペンハーゲン)所蔵
AM176a fol.(17世紀後半)
AM176c fol.(17世紀後半)
AM281 4to(17世紀後半)
AM544 4to(14世紀前半)“Hauksbók“、羊皮紙
AM573 4to(14世紀)羊皮紙、不完全
AM597b 4to(17世紀後半)
Rask29(18世紀後半)

・デンマーク王立図書館(コペンハーゲン)所蔵
Ny kgl. saml. 1148 fol.(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 1151 fol.(18世紀後半)
Ny kgl. saml. 1171 fol.(18世紀後半)不完全
Ny kgl. saml. 1723 4to(18世紀後半)不完全
Ny kgl. saml. 445 8vo(1869年)
Kall247 fol.(18世紀後半)不完全

・大英図書館(ロンドン)所蔵
BL Add. 24.969 fol.(1731年頃)

・アイスランド国立・大学図書館(レイキャヴィーク)所蔵
Lbs 678 4to(1852-54年)
Lbs 4613 4to(1700年頃)
JS 209 4to(1760年頃)
JS 638 4to(17-19世紀)不完全
ÍB 271 4to(1800年頃)

・トリニティ・カレッジ(ダブリン)所蔵
L.2.18 fol.(18世紀)
L.3.18 8vo(18世紀)

・スウェーデン国立公文書館(ストックホルム)所蔵
Säfstaholmssamlingen I Papp. 7(18世紀)不完全

・スウェーデン王立図書館(ストックホルム)所蔵
Papp. fol. nur 58(1690年)

・ハーバード大学ホートン図書館所蔵
Harvard, MS Icelandic 34 4to(1805年)

 『ブリトン人のサガ』を伝える代表的な写本はAM544 4to(編纂者のホイクル・エルレンソンHaukr Erlendssonの名にちなんで一般に『ホイクルの書』Hauksbókと呼ばれる)とAM573 4toであるが、『ホイクルの書』によって伝えられる版には『メルリーヌースの予言』は含まれ、『ブリタニア列王史』における『メルリヌスの予言』に該当する箇所に位置しているが、AM573 4toで伝えられる版には『メルリーヌースの予言』は含まれていない。
 この『ホイクルの書』とAM573 4toは性格的に大きく異なるテクストである。『ホイクルの書』は言わば百科事典様の書物を目指して編纂されたもので、『ブリトン人のサガ』の他には地理学や神学など諸々の学問分野の著作が収録されており、『ブリトン人のサガ』は文学作品というよりもむしろ歴史書としての性格を持たされ、簡潔な描写を特徴としているのに対し、AM573 4toの方では『ブリトン人のサガ』におけるアーサー王の死の後にクレチアン・ド・トロワの『ペルスヴァル』の後半部の翻案である『ヴァルヴェンの話』が続いており、内容の上でも感情描写や儀式などの細かな描写が多く、ロマンスの性格を持たされている。

 

 Notes

^1. 古アイスランド語ではHákon Hákonarson、現在のノルウェー語ではHåkon Håkonssonと表記される。日本語では現在のノルウェー語での呼び方に基づき、「ホーコン・ホーコンソン」あるいは「ホーコン四世」と表記されることが多い。

^2. Stefán Karlsson(2000)202頁およびKalinke, Marianne E.(2011a)15-16頁を参照。

^3. 『イーヴェンのサガ』(147頁)。『イーヴェンのサガ』のテクストはBlaisdell, Foster W.(ed.)Ívens saga. Ed. Arnam., Ser. B, vol. 18. Copenhagen: C. A. Reitzels Boghandel, 1979を参照した。頁数は使用テクストの頁数。

^4. 『イーセンドのサガ』(5頁)。『イーセンドのサガ』のテクストはTristrams saga ok Ísondar. Mit einer literarhistorischen Einleitung, deutscher Übersetzung und Anmerkungen zum ersten Mal herausgegeben von Eugen Kölbing, Heilbronn: Verlag von Gebr. Henninger, 1878.; Reprint. Hildesheim: Georg Olms Verlag, 1978を参照した。頁数は本テクストの頁数。

^5. 『パルセヴァルのサガ』は主としてクレチアン作品の前半のペルスヴァルが主人公の部分が基になっており、クレチアン作品の後半のゴーヴァン(Gauvain)が主人公となる部分は『ヴァルヴェンの話』(Valvens þáttr)として独立している。この章の本文では便宜上、『パルセヴァルのサガ』と『ヴァルヴェンの話』を合わせて『パルセヴァルのサガ』と呼ぶ。þáttrは「話」と訳されることが多いが、この語は「長編サガに付された付録、補遺」の意味で用いられる場合と、「短編の独立した物語」の意味で用いられる場合がある。『ヴァルヴェンの話』は「長編サガに付された付録、補遺」の方に該当すると言えよう。『スカルド詩人のサガ コルマクのサガ/ハルフレズのサガ』(森 信嘉 訳 東海大学文学部叢書 東海大学出版会 2005年)162頁、Kratz, Henry(1977a)31頁等を参照。

^6. 『エレクとエニッド』は1165-1170年頃のものとされ、『イヴァン』は1176年頃、『ペルスヴァル』は1181年頃に著されたとされる。

^7. 詳しくはLouis-Jensen, Jonna (ed.) Trójumanna saga, Ed. Arnam., Ser. A, vol. 8. Copenhagen: Munksgaard, 1963, XI-XVを参照。

^8. Kalinke(1981)63-68頁。

^9. Kalinke(1981)182頁、Kalinke(1975)17頁を参照。

^10. Gouchet, Olivier(1985)146頁を参照。

^11. Kalinke(1981)181-182頁、Kalinke(1975)17頁、Gouchet(1985)146頁、Kretschmer, Bernd(1982)182-183頁を参照。

^12. Kalinke(1981)180-181頁、Kalinke(1975)18頁、Gouchet(1985)146頁、Kretschmer(1982)205-206頁を参照。

^13. 復活祭直前の金曜日で、キリストの受難と死を記念する日。

^14. Bornholdt, Claudia(2011)103-104頁。

^15. 特にKalinke(1981)やSchach, Paul(1960 / 1987)らにより、『イーソッドのサガ』を『イーセンドのサガ』のパロディーと見る解釈が主張された。

 

 

主要参考文献

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一次資料
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Blaisdell, Foster W. Jr. and Kalinke, Marianne E.(trans.)Ívens saga. In: Erex saga and Ívens saga : the Old Norse versions of Chrétien de Troyes's Erec and Yvain / translated with an introduction by Foster W. Blaisdell Jr. and Marianne E. Kalinke, 35-83. Lincoln, NB: University of Nebraska Press, 1977.

Kalinke, Marianne E.(trans.)Íven’s Saga. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 2: Knights of the Round Table, 39-99. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

クレチアン・ド・トロワ『イヴァン』
Kristian von Troyes: Yvain (Der Löwenritter). Textausgabe mit Variantenauswahl, Einleitung, erklärenden Anmerkungen und vollständigem Glossar. Herausgegeben von Wendelin Foerster. Vierte verbesserte und vermehrte Auflage. Halle a. S.: M. Niemeyer, 1912.

菊池淑子訳・著『クレティアン・ド・トロワ『獅子の騎士』 フランスのアーサー王物語』 平凡社、1994年。


二次資料
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1.2.『エレクスのサガ』(Erex saga)
一次資料
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(英訳)
Blaisdell, Foster W. Jr. and Kalinke, Marianne E.(trans.)Erex saga. In: Erex saga and Ívens saga : the Old Norse versions of Chrétien de Troyes's Erec and Yvain / translated with an introduction by Foster W. Blaisdell Jr. and Marianne E. Kalinke, 1-33. Lincoln, NB: University of Nebraska Press, 1977.

Kalinke, Marianne E.(trans.)Erex saga. In: Marianne E.Kalinke(ed.)Norse Romance 2: Knights of the Round Table, 223-59. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

クレチアン・ド・トロワ『エレクとエニッド』
Kristian von Troyes: Erec und Enide. Textausgabe mit Variantenauswahl, Einleitung, erklärenden Anmerkungen und vollständigem Glossar. Herausgegeben von Wendelin Foerster. Dritte Auflage. Halle a. S.: M. Niemeyer, 1934.


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1.3.『パルセヴァルのサガ』(Parcevals saga)と『ヴァルヴェンの話』(Valvens þáttr)
一次資料
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一次資料
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Driscoll, M. J.(ed.)Skikkjurímur. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 2: Knights of the Round Table, 272-314. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

(英訳)
Cook, Robert(trans.)Janual. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 11-21. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

Kalinke, Marianne E.(trans.)The Saga of the Mantle. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 2: Knights of the Round Table, 7-29. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

Driscoll, M. J.(ed.)Mantle Rhymes. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 2: Knights of the Round Table, 273-315. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.


フランス語原典の短詩

Marie de France, Le Lai du Lanval, accompagné du texte du lanuals lioð et de sa traduction française avec une introduction et des notes par P. Aebischer, ed. J. Rychner. Genève: Droz / Paris: Minard, 1958.

Marie de France, Les Lais de Marie de France, ed. J. Rychner. Paris: Champion, 1966.

Bennett, Philip E.(ed.)Le Lai du cort mantel. In: Marianne E. Kalinke.(ed.)Mọttuls saga. …, supra, 4-68.

(邦訳)
マリ・ド・フランス 森本英夫、本田忠雄訳『レ 中世フランス恋愛譚』 (メルヘン文庫) 東洋文化社、1980年。

月村辰雄訳『十二の恋の物語 マリー・ド・フランスのレー』 (岩波文庫 赤582-1) 岩波書店、1988年。

マリ・ド・フランス 新倉俊一訳「ランヴァル」、『フランス中世文学集』2 白水社、1991年、351-368頁。


二次資料
Andrés Björnsson(1947)Um Skikkjurímur. Skírnir 121: 171-81.

Barnes, Geraldine(1975)The Riddarasögur and Medieval European Literature. Mediaeval Scandinavia 8: 140-58.

Barnes, Geraldine(1989)Some Current Issues in riddarasögur Research. Arkiv för nordisk filologi 104: 73-88.

Barnes, Geraldine(2000)Romance in Iceland. In Margaret Clunies Ross(ed.)Old Icelandic Literature and Society, 266-86. Cambridge: Cambridge University Press.

Björn K. Þórólfsson(1934)Rímur fyrir 1600. Safn Fræðafjelagsins um Ísland og Íslendinga 10. Copenhagen.

Bruckner, Matilda Tomaryn and Burgess, Glyn.(2006)Arthur in the Narrative Lay. In: Glyn Burgess and Karen. Pratt(eds.)The Arthur of the French, 186-214. Cardiff: University of Wales Press.

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Halvorsen, Eyvind Fjeld(1972)Strengleikar. In: Kulturhistorisk leksikon for nordisk middelalder fra vikingetid til reformationstid 17, cols. 301-3. København(Copenhagen): Rosenkilde og Bagger.

Kalinke, Marianne E.(1981)King Arthur, North-by-Northwest. The matière de Bretagne in old Norse-Icelandic romances, Bibliotheca Arnamagnæana 37. Copenhagen: C. A. Reitzels Boghandel.

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McCracken, Peggy(1998)The Romance of Adultery. Queenship and Sexual Transgression in Old French Literature. Philadelphia: University of Pennsylvania Press.

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Sif Rikhardsdóttir(2008)The Imperial Implications of Medieval Translations: Old Norse and Midddle English Versions of Marie de France’s Lais. Studies in Philology 105, 2: 144-64.

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Tveitane, Mattias(1973)Om språkform og forelegg i Strengleikar. Bergen: Universitetsforlaget.


1.5.トリスタン物語に題材を取った作品群
1.5.1.『トリストラムとイーセンドのサガ』(Tristrams saga ok Ísöndar)
一次資料
Tristrams saga ok Ísondar. Mit einer literarhistorischen Einleitung, deutscher Übersetzung und Anmerkungen zum ersten Mal herausgegeben von Eugen Kölbing, Heilbronn: Verlag von Gebr. Henninger, 1878.; Reprint. Hildesheim: Georg Olms Verlag, 1978.

Schach, Paul(ed.)An Unpublished Leaf of Tristrams saga: AM 567 Quarto, XXII, 2. Research Studies (Washington State University) 32 (1964): 50-62.

Saga af Tristram ok Isönd samt Möttuls saga. Udgivne af de Kongelige nordiske oldskrift-selskab [Gisli Gislason Brynjulfsson, Copenhagen Nordiske oldskrift-selskab]. Kjöbenhavn(Copenhagen): Thieles Bogtrykkeri, 1878.

Schach, Paul(ed.)The Reeves Fragment of Tristrams saga ok Ísöndar. In: Bjarni Guðnason, Halldór Halldórsson and Jónas Kristjánsson (eds.) Einarsbók. Afmæliskveðja til Einars Ól. Sveinssonar. 12. Desember 1969, 296-308. Reykjavík: Nokkrir Vinir, 1969.

Jorgensen, Peter(ed.)Tristrams saga ok Ísöndar. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 28-222. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

(英訳)
Jorgensen, Peter(trans.)The Saga of Tristram and Ísönd. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 29-223. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

The Saga of Tristram and Ísönd translated with an introduction by Paul Schach. Lincoln, NE / London: University of Nebraska Press, 1973.


トマの『トリスタン』
Thomas, Tristan, eingeleitet, textkritisch bearbeitet und übersetzt von Gesa Bonath, Klassische Texte des romanischen Mittelalters in zweisprachigen Ausgaben, 21. München: Wilhelm Fink, 1985.


(邦訳)
トマ 佐藤輝夫訳「風雅体本 トリスタン物語」、佐藤輝夫『トリスタン伝説 流布本系の研究』 中央公論社、1981年、587-786頁。

トマ 新倉俊一訳「トリスタン物語」、『フランス中世文学集』1 白水社、1990年、269-354頁。


二次資料
Hallberg, Peter(1973)Broder Robert, Tristrams saga och Duggals leizla. Arkiv för Nordisk Filologi 88: 55-71.

Harris, Sylvia C.(1977)The Cave of Lovers in the "Tristramssaga" and Related Tristan Romances. Romania 98: 306-30, 460-500.

Kjær, Jonna(1978)Mytemodel. Tristans forældres kærlighed som ‘mise en abyme’ i Saga og hos Gottfried af Strassburg. Odense: Laboratorium for folkesproglig Middelalderlitteratur ved Odense Universitet.

Kjær, Jonna(1990)Tristrams saga ok Ísöndar : Une version christianisée de la branche dite courtoise du “Tristan”. In: Keith Busby and Erik Kooper(eds.)Courtly Literature: Culture and Context. Selected papers from the 5th Triennial Congress of the International Courtly Literature Society, Dalfsen, The Netherlands, 9–16 August 1986, 367-77. Amsterdam and Philadelphia: John Benjamins.

Kalinke, Marianne E.(1981)King Arthur, North-by-Northwest. The matière de Bretagne in old Norse-Icelandic romances, Bibliotheca Arnamagnæana 37. Copenhagen: C. A. Reitzels Boghandel.

Kalinke, Marianne E.(2009)Tristrams saga ok Ísöndar, ch. 80 : Ekphrasis as Recapitulation and Interpretation. In: Analecta Septentrionalia. Ergänzungsbände zum Reallexikon der Germanischen Altertumskunde 65, 221-37. Berlin: de Gruyter.

佐藤輝夫『トリスタン伝説 流布本系の研究』 中央公論社、1981年。

Schach, Paul(1957-61)Some Observations on Tristrams Saga. Saga-Book of the Viking Society 15: 102-29.

Schach, Paul(1960)An Excerpt from Tristrams Saga. Scahdinavian Studies 32: 83-88.

Schach, Paul(1962)Tristan in Iceland. Prairie Schooner 34: 151-64.

Schach, Paul(1965)The Style and Structure of Tristrams saga. In: Carl F. Bayerschmidt and Erik J. Friis(eds.)Scandinavian Studies: Essays Presented to Dr. Henry Goddard Leach on the Occasion of His Eighty-fifth Birthday, 63-86. Seattle: University of Washington Press.

Schach, Paul(1969)Some Observations on the Influence of Tristrams saga ok Ísöndar in Old Icelandic Literature. In: Edgar C. Polomé(ed.)Old Norse Literature and Mythology: A Symposium, 81-129. Austin: The University of Texas Press.

Schach, Paul(1970)An Anglo-Saxon custom in Tristrams saga? Scandinavian Studies 42: 430-37.

Sverrir Tómasson(1977)Hvenær var Tristrams sögu snúið? Gripla 2: 47-78.

谷口幸男「アイスランドのトリスタン伝説」『大阪学院大学国際学論集』9(1)、1998年、105-128頁。

York, Ernst(1969)An Anglo-Saxon custom in Tristrams saga. Scandinavian Studies 41: 259-62.


1.5.2.『トリストラムとイーソッドのサガ』(Saga af Tristram ok Ísodd)
一次資料
Saga af Tristram ok Ísodd, i Grundtexten med Oversættelse af Gísli Brynjúlfsson. Annaler for Nordisk Oldkyndighed og Historie 1851: 3-160.

Jorgensen, Peter(ed.)Saga af Tristram ok Ísodd. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 244-90. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

(英訳)
Hill, Joyce(ed.)The Saga of Tristram and Ísodd. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 245-91. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

Hill, Joyce(trans.)The Icelandic Saga of Tristan and Isolt(Saga af Tristram ok Ísodd)In: Joyce Hill(ed.)The Tristan Legend: Texts from Northern and Eastern Europe in Modern English Translation, 6-28. Leeds: University of Leeds Graduate Centre for Medieval Studies, 1977.


二次資料
Barnes, Geraldine(1999)Tristan in late medieval Norse literature: saga and ballad. In: Xenja von Ertzdorff (Hg.) Tristan und Isolt im Spätmittelalter. Vorträge eines interdisziplinären Symposiums vom 3. bis 8. Juni 1996 an der Justus-Liebig-Universität Gießen, Chloe. Beihefte zum Daphnis 29, 373-396. Amsterdam and Atlanta: Editions Rodopi B.V..

Glauser, Jürg(1983)Isländische Märchensagas. Studien zur Prosaliteratur im spätmittelalterlichen Island, Beiträge zur nordischen Philologie 12, Basel/Frankfurt a. M.: Helbing and Lichtenhahn.

Kalinke, Marianne E.(1981)King Arthur, North-by-Northwest. The matière de Bretagne in old Norse-Icelandic romances, Bibliotheca Arnamagnæana 37. Copenhagen: C. A. Reitzels Boghandel.

Kalinke, Marianne E.(1990)Bridal-quest romance in medieval Iceland, Islandica 46. Ithaca/London: Cornell University Press.

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Kramarz-Bein, Susanne(2000)Die jüngere altisländische Tristrams saga ok Ísoddar und ihre literarische Tradition. In: Robert Nedoma, Hermann Reichert und G. Zimmermann (Hg.) Erzählen im mittelalterlichen Skandinavien,Wiener Studien zur Skandinavistik (WSS) 3, 21-45. Wien: Edition Praesens.

Leach, Henry Goddard(1921)Angevin Britain and Scandinavia, Harvard studies in comparative literature 6. Cambridge: Harvard University Press.

Schach, Paul(1960)The Saga af Tristram ok Ísodd. summary or satire? Modern Language Quarterly 21: 336-352.

Schach, Paul(1987)Tristrams Saga ok Ýsoddar as burlesque. Scandinavian Studies 59: 86-100.

Thomas, Maureen F.(1983)The Briar and the vine: Tristan goes north. In: Richard Barber (ed.) Arthurian literature Ⅲ, 53-90. Woodbridge/Suffolk: D. S. Brewer.


1.5.3.『すいかずら』(Geitarlauf)
一次資料
Geitarlauf. In: Robert Cook and Mattias Tveitane(eds.)Strengleikar. …, supra, 195-9.

Cook, Robert(ed.)Geitarlauf. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 4-6. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

(英訳)
Cook, Robert(trans.)Geitarlauf. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 5-7. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

マリ・ド・フランスの短詩
Marie de France, Les Lais de Marie de France, ed. J. Rychner. Paris: Champion, 1966.

(邦訳)
マリ・ド・フランス 森本英夫、本田忠雄訳『レ 中世フランス恋愛譚』 (メルヘン文庫) 東洋文化社、1980年。

月村辰雄訳『十二の恋の物語 マリー・ド・フランスのレー』 (岩波文庫 赤582-1) 岩波書店、1988年。

マリ・ド・フランス 新倉俊一訳『すいかずら』、『フランス中世文学集』1 白水社、1990年、399-402頁。


二次資料
Halvorsen, Eyvind Fjeld(1972)Strengleikar. In: Kulturhistorisk leksikon for nordisk middelalder fra vikingetid til reformationstid 17, cols. 301-3. København(Copenhagen): Rosenkilde og Bagger.

Hunt, Tony and Bromiley, Geoffrey(2006)The Tristan Legend in Old French Verse. In Glyn Burgess and Karen Pratt(eds.)The Arthur of the French, 112-34. Cardiff: University of Wales Press.

Kalinke, Marianne E.(1981)King Arthur, North-by-Northwest. The matière de Bretagne in old Norse-Icelandic romances, Bibliotheca Arnamagnæana 37. Copenhagen: C. A. Reitzels Boghandel.

Larrington, Carolyne(2009)Queens and Bodies: the translated Arthurian lais and Hákon Ⅳ’s Kinswomen. Journal of English and Germanic Philology 108: 506-27.

Larrington, Carolyne(2011)The translated lais. In: Marianne E. Kalinke.(ed.)The Arthur of the North. The Arthurian Legend in the Norse and Rus’ Realms, 77-97. Cardiff: University of Wales Press.

Leach, Henry Goddard(1966)The Lais bretons in Norway. In: Mieczyslaw Brahmer, Stanislaw Helsztynski and Julian Krzyzanowski(eds.)Studies in Language and Literature in Honour of Margaret Schlauch, 203-12. Walsaw: PWN-Polish Scientific Pubiishers.

Meissner Rudolf(1902)Die Strengleikar. Ein Beitrag zur Geschichte der altnordischen Prosalitteratur. Halle a. S: M. Niemeyer.

Reichert, Hermann(1986)King Arthur's Round Table: Sociological Implications of Its Literary Reception in Scandinavia. In: John Lindow, Lars Lônnroth, and Gerd Wolfgang Weber(eds.)Structure and Meaning in Old Norse Literature: New Approaches to Textual Analysis and Literary Criticism. The Viking Collection: Studies in Northern Civilization 3, 394-414. Odense: OdenseUniversity Press.

Sif Rikhardsdóttir(2008)The Imperial Implications of Medieval Translations: Old Norse and Midddle English Versions of Marie de France’s Lais. Studies in Philology 105, 2: 144-64.

Skårup, Povl(1975)Les Strengleikar er les lais qu’ils traduisent. In: Les Relations littéraires Franco-Scandinaves au Moyen Age. Actes du colloque de Liège(avril 1972), 97-115.Paris: Société d'Edition “Les Belles Lettres”.

Tveitane, Mattias(1973)Om språkform og forelegg i Strengleikar. Bergen: Universitetsforlaget.


1.5.4.『トリストラムのバラッド』(Tristrams kvæði)
一次資料
Jón Helgason(ed.)Íslenzk Fornkvæði 1, 173-43; 3, 198-201; 4, 221-26; 5, 22-25. Copenhagen: Munksgaard, 1962, 1963, 1965.

Cook, Robert(ed.)Tristrams kvæði. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 230-38. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

(英訳)
Cook, Robert(trans.)The Ballad of Tristram. In: Marianne E. Kalinke(ed.)Norse Romance 1: The Tristan Legend, 231-39. Cambridge: D. S. Brewer, 1999.

Hill, Joyce(trans.)The Icelandic Ballad of Tristan(Tristrams kvæði)In: Joyce Hill(ed.)The Tristan Legend: Texts from Northern and Eastern Europe in Modern English Translation, 29-38. Leeds: University of Leeds Graduate Centre for Medieval Studies, 1977.


二次資料
Driscoll, M. J.(2011)Arthurian Ballads, rímur, Chapbooks and Folktales. In: Marianne E. Kalinke(ed.)The Arthur of the North. The Arthurian Legend in the Norse and Rus’ Realms, 168-195. Cardiff: University of Wales Press.

Gísli Brynjúlfsson(1878)Danske, islandske og færøiske Kvad om Tistram og Isold. In: Saga af Tristram ok Ísönd samt Möttuls saga, 327-70. Kjöbenhavn(Copenhagen): Thieles Bogtrykkeri.

Kalinke, Marianne(1996d)”Tristrams kvæði”. In Norris Lacy(ed.)The New Arthurian Encyclopedia. Updated Paperback Edition, 474. New York/London: Garland Publishing, Inc.

Vésteinn Ólason(1982)The Traditional Ballads of Iceland: Historical Studies. Reykjavík: Stofnun Árna Magnússonar.

Schach, Paul(1964)Tristan und Isolde in Scandinavian Ballad and Folktale. Scandinavian Studies 36: 281-97.


1.6.『ブリトン人のサガ』(Breta sögur)と『メルリーヌースの予言』(Merlínússpá)
一次資料
Jón Helgason(ed.)The Arnamagnæan Manuscripts 371, 4to; and 675, 4to. Copenhagen, 1960.

Jón Sigurðsson(ed.)Breta sögur. In: Trójumanna saga ok Breta sögur, efter Hauksbók med dansk Oversættelse. Annaler for nordisk Oldkyndighed og Historie, 3-145. Copenhagen, 1849.

Breta sögur. In: Finnur Jónsson(ed.)Hauksbók, 231-302. Copenhagen, 1892-96.

Merlínússpá. In: Finnur Jónsson(ed.)Hauksbók, 272-83. Copenhagen, 1892-96.


ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』

Wright, Neil(ed.)The Historia Regum Britannie of Geoffrey of Monmouth 1 Bern, Burgerbibliothek, MS. 568. Cambridge: D. S. Brewer, 1984.

ジェフリー・オブ・モンマス 瀬谷幸男訳『ブリタニア列王史 アーサー王ロマンス原拠の書』 南雲堂フェニックス、2007年。


二次資料
Broberg, G.(1908)Ormr Snorrasons bok. Arkiv för nordisk filologi 24: 42-66.

Crick, Julia(1991)The Historia Regum Britannie of Geoffrey of Monmouth 4, Dissemination and Reception in the Later Middle Ages. Cambridge: D. S. Brewer.

Christoffersen, M and Bekken, O. B.(1985)Algorismus i Hauksbók i europeisk perspektiv. The Sixth International Saga Conference 28. 7.- 2. 8. 1985, Workshop Papers 1, 131-50. Copenhagen.

D'Arcier, Louis Faivre(2006)Histoire et géographie d'un mythe. La circulation des manuscrits du De excidio Troiae de Darès le Phrygien (VIIIe-XVe siècles). Paris: École nationale des Chartes.

Glauche, Günte(1970)Schullektüre im Mittelalter. Entstehungen und Wandlungen des Lektürekanons bis 1200 nach den Quellen dargestellt. Münchener Beiträge zur Mediävistik und Renaissance-Forschung 5. München.

Gödel, Vilhelm(1904)Ormr Snorrasons bok. In: Nordiska studier tillegnade Adolf Noreen på hans 50-årsdag den 13 mars 1904, af studiekamrater och lärjungar, 357–374. Uppsala: K. W. Appelbergs boktryckeri.

Gropper, Stefanie(2011)Breta sögur and Merlínússpá. In: Marianne E. Kalinke(ed.)The Arthur of the North. The Arthurian Legend in the Norse and Rus’ Realms, 48-60. Cardiff: University of Wales Press.

Gropper, Stefanie(2014)Die Transmission der Breta sögur als Beispiel für verschiedene Formen der translatio innerhalb der mittelalterlichen isländischen Literatur. In: Jürg Glauser and Susanne Kramarz-Bein(eds.)Rittersagas. Übersetzung – Überlieferung – Transmission, 219-37. Tübingen/Basel: Narr Francke Attempto Verlag.

Horst, Simone(2006)Die Merlínússpá – ein Gedicht von Gunnlaugr Leifsson? Skandinavistik 36: 22-31.

Kalinke, Marianne E.(1985)Norse Romance(riddarasögur). In: Carol J. Clover and John Lindow (eds.) Old Norse-Icelandic Literature: A Critical Guide, Islandica 45, 316-63. Ithaca/London.

Kalinke, Marianne E.(2009)Arthurian Legend in Breta sögur. Historiography on the Cusp of Romance. In: Margrét Eggertsdóttir et al.(eds.)Greppaminni: Essays in Honour of Vésteinn Ólason, 217-30. Reykjavík: Hið íslenska bókmenntafélag.

Lavender, Philip(2006)Merlin and the Völva. Viking and Medieval Scandinavia 2: 111-39.

Sanders, Christopher(1979)The Order of Knights in Ormsbók. Opuscula 7(Bibliotheca Arnamagnæana 34): 140-56.

Stefán Karlsson(1964)Aldur Hauksbókar. Fróðskaparrit. Annales Societatis Scientiarium Færoensis 13: 114-21.

Würth, Stefanie(1998)Der "Antikenroman" in der isländischen Literatur des Mittelalters. Eine Untersuchung zur Übersetzung und Rezeption lateinischer Literatur im Norden. Basel: Helbing & Lichtenhahn.

 
記事作成日:2016年6月24日  
最終更新日:2017年9月3日

 

 

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