The International Arthurian Society - 国際アーサー王学会日本支部

<映画の中のアーサー王伝説 1>『スター・ウォーズ』:宇宙版アーサー王伝説

小路 邦子

 

 はじめに
 「遠い昔、遥か彼方の銀河系で・・・」というナレーションで始まる『スターウォーズ』(以下SW)が「宇宙版アーサー王伝説」だなどというタイトルを見て首をかしげる人もいるかもしれない。しかし、この作品にはすでに色々と指摘されている様々な要素—歌舞伎の影響とか各地の神話伝説—などの他に、アーサー王伝説の要素もとっぷりと入り込んでいるのだ。これからそれを見てみよう。

 

 【1】二つの騎士団
第一作の「エピソード4」から始まり、5、6といわゆる「旧作」シリーズが続いた後に、「エピソード1」に戻って「新作」シリーズが2、3と続き、物語の前日譚が語られるという構成そのものがすでに、13世紀フランスの「ランスロ=聖杯物語群」(流布本大系)の成立とそっくりなのである。この散文作品群は、1215-35年頃に成立したと考えられ、作者は不詳である。まずランスロ(英語名ラーンスロット)や聖杯探索の物語、アーサーの死を語ってから、それ以前の聖杯の来歴へと続いていく。

 『ランスロ本伝(散文ランスロ)』Le Livre de Lancelot del Lac (Prose Lancelot)
 『聖杯の探索』La Queste del Saint Graal
 『アーサー王の死』La Mort le Roi Artu
 『聖杯の由来物語』Lestoire del Saint Graal
 『メルラン(英語名マーリン)物語』Lestoire de Merlin

そして、流布本の続編が作られた様に、新しいエピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)以降が作られた。ますます似ているではないか。

 『スターウォーズ エピソードIV/新たなる希望』(1977年)
 『スターウォーズ エピソードV/帝国の逆襲』 (1980年)
 『スターウォーズ エピソードVI/ジェダイの帰還』(1983年)
 『スターウォーズ エピソードI/ファントム・メナス』(1999年)
 『スターウォーズ エピソードII/クローンの攻撃』 (2002年)
 『スターウォーズ エピソードIII/シスの復讐』(2005年)

しかし、似ているのは作られ方だけではない。実は、監督のジョージ・ルーカスは米国の神話学者ジョーゼフ・キャンベルに強く影響を受けている。キャンベルは普通はなかなか入れないルーカス・ファームに夫婦で招かれてもいる。キャンベルは神話の中でも特に英雄神話に注目し、アーサー王伝説を重視した。この影響の下に出来上がったのが『スター・ウォーズ』なのである。 (本論では、ルーカス監督が直に関与しているこの六作だけを考察の対象とする。)

だから、SWのファンならキャンベルの『時を超える神話』(講演集)、『千の顔を持つ英雄』やビル・モイヤーズとの対話『神話の力』などを読んでみよう。

アーサー王の「円卓の騎士団」Order of the Round Table とジェダイ騎士団 Order of the Jedi、どちらも「騎士団」Orderと称される騎士の集まりだ。そして、騎士団には掟が付きものだ。そこで、まずはアーサー王の円卓の騎士団の誓いを見てみよう。

<円卓の誓い>
 「アーサー王は(中略)決して残虐なことをしたり人を殺したりせぬこと、常に裏切はせず、慈悲を求めるものには与え、守らねば永遠に名誉を失いアーサー王を主君と仰ぐことはできなくなること、常に、貴婦人、乙女、淑女、寡婦を守るために尽くし、その権利を守り、決して力づくなことはしないこと、違反すれば死刑だと命じた。また、愛のためだろうと世俗のもののためだろうと、不当な戦いはせぬよう命じた。そこで、円卓の騎士は老いも若きも皆これを誓い、毎年精霊降臨祭の大祭の場でこの誓いを行うのであった。」 (The Works of Sir Thomas Malory, Vinaver & Field, 1990, p.120。小路訳。)

要するに、乱暴したり裏切ったりしない、女性を大切にする、不当な戦いはしない、という誓いだ。こういう誓いが行われたということは、逆にこうしたことを毎年誓わせなければならない程に、そうしたろくでもないことが横行していたということであろう。

この円卓には三人の騎士道の華と呼ばれる騎士がいる。ラーンスロット、トリストラム、ラメラックの三人だ。この三人が円卓の誓いをどのように守ったのかは、15世紀にイングランドで執筆されたトマス・マロリーの『アーサー王の死』を読んでほしい。ちくま文庫版(厨川文夫・圭子編訳)が手に入りやすい(ただし抄訳なので、「バリンの物語」「トリストラムの物語」[トリストラムだけで4割近くを占める]と「聖杯の物語」は入っていないから、全体の4割くらいである)。

一方のジェダイの掟はこうである。
 ・The Jedi Creed
 Jedi are the guardians of peace in the galaxy.
 Jedi use their powers to defend and protect, never to attack others.
 Jedi respect all life, in any form.
 Jedi serve others rather than ruling over them, for the good of the galaxy.
 Jedi seek to improve themselves through knowledge and training.
   (英語版出典: http://starwars.wikia.com/wiki/Jedi_Code

 <ジェダイの綱領>
 ジェダイは銀河の平安の守護者である
 ジェダイはその力を防御と保護に用い、決して他者への攻撃に用いてはならない
 ジェダイはいかなる形であれ、あらゆる生命を尊重する
 ジェダイは銀河の善のために他者に仕え、支配はしない
 ジェダイは知識と訓練を通じて自己の研鑽を積む

似たような働きをするだけに、やはり円卓の誓いと似ている。
ところで、ジェダイの評議会には円卓こそないものの、床に描かれた円形の模様の周囲に評議員たちが丸くなって坐っている様が、円卓を思わせる。

 

 【2】 無名nobodyの若者が、宿命の旅を経て、一人前の英雄 heroへ
I. 父を知らぬ若者たち
アーサー王の物語(以下[A])では、父を知らない若者が活躍する。SWでも、アナキンもルークも父を知らないで育つ。

[A] アーサー、ラーンスロット、トリスタン(トリストラム)、パーシヴァル、ガラハド、モードレッド

1)アーサー
マーリンの魔法でコンウォール公に変身したウーサー・ペンドラゴン王が公妃イグレインとの間にもうけた。誕生と同時にマーリンによって連れ去られ、他家で育つ。父王はまもなく他界した。アーサーは養父エクターを父と思って育つ。

2) ラーンスロット
12世紀後期フランスのクレティアン・ド・トロワは『ランスロまたは荷車の騎士』で、彼が「湖のランスロ」と呼ばれ、彼を育てた妖精から指輪を与えられた、ということしか述べていない。

13世紀フランスの『散文ランスロ』では、父のバン王が戦死した後、母から赤子のランスロを受け取った乙女が、湖の中に連れて行って養育した。

13世紀スイスのウルリヒ・フォン・ツァツィックホーフェンの『ランツェレト』では、ランツェレトは母王妃から預けられた湖の精に連れ去られて、15歳まで女性の王国で過ごし、自分がバン王の子であることを知らないままアーサーの宮廷に向かう。

3)トリスタン(英語名トリストラム)
13世紀ドイツのゴットフリート・フォン・シュトラースブルクによる『トリスタンとイゾルデ』では、父は誕生前に戦死。母もその悲しみのうちに子を産んで亡くなる。商人に誘拐された後、偶然に伯父であるコンウォール王マルクの許にたどり着く。ただし、別のヴァージョンによったと思われるマロリーでは、父は生きていて、後妻から息子を守るために国外に出す。紆余曲折を経て、伯父のマルクの許にやってくる。

4)パーシヴァル
騎士であった父も兄も相次いで戦死した後、母は幼いパーシヴァルを連れて人里離れたウェールズの山中で暮らす。騎士のことも世間のことも何も知らされずに育ったパーシヴァルは、あるとき出会った騎士を天使か神だと思う。光り輝く鎧に身を包んだ騎士に憧れ、母の嘆きを投げうってアーサー王の宮廷へ向かう。

5)ガラハド
ラーンスロットと聖杯王の姫エレーンとの間に生まれる。ラーンスロットは魔法のために、アーサーの王妃と臥所(ふしど)を共にしていると思っていた。ガラハドは尼僧院で育てられる。15歳の時にアーサーの宮廷にやって来て、父によって騎士に叙任され、円卓の「危険な席」を占める。また川を流れ下って来た石に刺さっていた、世界一の騎士にしか抜けない剣を抜く。

6)モードレッド
12世紀ジェフリー・オヴ・モンマスの『英国列王史』では、アーサーの妹アンナとロット王の子で、ガウェインの弟。

13世紀の流布本『アーサー王の死』やその系統を受け継ぐマロリーでは、アーサーがそうとは知らずに、父親違いの姉との間にもうけた子。マーリンにそのことを知らされたアーサーは、5月1日生まれの貴族の子をすべて殺そうと船に乗せてキャメロットに送らせるが、船は難破し、モードレッドのみ助かる。漁師に拾われて育てられる。

[SW] アナキン、ルーク
1) アナキン
父はいない。母は処女のままアナキンを産んだという。辺境の星で母と一緒に奴隷として暮らしている。クワイ=ガンと共に星にやって来た美しいパドメを見て、「あなたは天使なの?」とパーシヴァルのように無邪気に訊く。並外れたフォースを持ち、ポッドの操縦にも長けていて、『ベン・ハー』の戦車レースを思わせるポッド・レースに勝利し、奴隷の身から解放される。

初めて騎士を目にしたパーシヴァルは、このように言う。

「ああ! 神さま、お許し下さい。おれが目にしているのは天使だ、おれはひどいまちがいをやらかしてた、とんでもないことだった、悪魔がやってくると思うなんて。母上がおれに言われたことは作り話じゃなかった。天使というものは何ものよりも美しい。神さまを別にすれば、この世でいちばん美しいものと言われたのだ。いまおれが見てるのはきっと神さまだ。だって、あの方々のうちのお一人は、とても美しくて、こう言っちゃ申し訳ないが、他の方々の美しさはその十分の一にも足りないんだから。母上はこうおっしゃった、他の誰よりも、神さまを崇め、祈り、尊ばなければいけませんよ、とね。だからおれはあのお方をまず崇めて、それから他の天使がたを崇めるんだ」 ・・・
「若者よ、怖がらんでもよい」
「いいえ、こわくなんかありません、私の信じる救い主イエスにかけて、と若者は言う、あなたは、神さまでは?」
(クレチアン・ド・トロワ『ペルスヴァルまたは聖杯の物語』天沢退二郎訳)

2)ルーク
母パドメはお産の際、父アナキンの怒りのフォースによって落命。ルークは、ジェダイ抹殺を企てる銀河皇帝の目を逃れ、父は死んだと教えられて、義理の伯父の許で育つ。父譲りの強力なフォースを持つ。

II. 旅/冒険への召命
若者は何かしらの冒険や旅を通じて、それまでとは別の段階に入る。

[A] 1) ウーサー・ペンドラゴン王が没した後、空位となった玉座にふさわしい者を人々は選びかねていた。ある年、真の王だけが抜くことができる石に刺さった剣が現れ、アーサーはこれを抜いて王位に就く。その石は、前年のクリスマスにロンドンで一番大きな教会の前に忽然と現れた。

 そして、朝課と最初の礼拝が終わると、教会の庭には主祭壇に面して大きな真四角の石、それも大理石のような石があった。その石の中央には、高さ一フィートの鋼の鉄床(かなとこ)のようなものがあって、そこに抜き身の見事な剣が切っ先を下にして突き刺さっていた。剣には金文字でぐるりと次のように記されていた。「この石と鉄床よりこの剣を抜きたる者は、生まれついての全イングランドの正当な王なり。」(Malory, p.12。小路訳。)

2)アーサーは石から抜いた剣(13世紀フランスの『メルラン物語』と15世紀英国のマロリー『アーサー王の死』では「エクスカリバー」と呼ばれる)を、一騎打ちの際に折ってしまう。マーリンは剣を失ったアーサーをとある湖まで連れて行くと、湖からは白い絹をまとった一本の腕が突き出ていて、手には鞘に入った剣を握っていた。そこに湖の貴婦人が湖上を渡ってやって来た。アーサーは湖の貴婦人から、彼女が求める時に贈り物を与えるという約束と引き換えにその剣を取る許可を得て、小舟で取りに行く。剣を取ると、腕は水中に消えた。後に贈り物を要求しに宮廷にやって来た湖の貴婦人が、この剣はエクスカリバーと言って、「鋼鉄を断ち斬る」という意味だと教える。そして貴婦人は、自分の兄弟の仇として宮廷にいたバリンの首を要求する。バリンは、術を使って彼の母を殺した湖の貴婦人を追い求めていたので、彼女の首を打落とす。このためアーサーは彼を追放する(『続メルラン』とマロリー)。

[SW]
1) アナキンはジェダイの一行と出会う。彼はジェダイ・マスターのヨーダも敵わぬ程のフォースを生み出す血中のミディ=クロリアン値を示した。先を読む力を持つ。これらは少しばかりマーリンの力を思い起こさせる。こうして、フォースにバランスをもたらす「選ばれし者」the Chosen One として、ジェダイの仲間となるべく、母と別れて去って行く。

2)ルークは留守中に、伯父の一家を全滅させられる。ジェダイのオビ=ワンと共に、ジェダイに加わるべく旅立つ。オビ=ワンから、父のライトセーバーを渡される。

III. 導師の存在と喪失
導き手としての魔法使いないしは特異な力(フォース)をもつ師がいるが、のちにその師を失う。

[A] マーリン
最初にヴォーティガン、次いでアーサーの伯父オーレリアス・アンブローシアスと父ウーサー・ペンドラゴンに仕えたのち、アーサーに仕え、またアーサーを導く助言者の役割も果たす。マーリンは円卓を造り、様々なことを予言し、また変身もできる。しかし、弟子にした女魔法使いに溺れ、結局は彼女によって幽閉されてしまう。マロリーでは、マーリンは木の中に閉じ込められ、ある時通りかかったガウェインに話しかけたという。物語によっては、水晶の洞窟に閉じ込められたり、ガラスの壁や空気の壁の中に閉じ込められたりする。

[SW] クワイ=ガン・ジン、オビ=ワン・ケノービ、ヨーダ
1) クワイ=ガン・ジン
オビ=ワン・ケノービの師。オビ=ワンが一人前になるのと同時にアナキンを預かるが、シス(ジェダイとは違い、フォースを自分の野望のためにのみ使う銀河系の悪と恐怖の信奉者)の暗黒卿ダース・シディアスとの戦いで亡くなる。

2)オビ=ワン・ケノービ
師のクワイ=ガンの死後アナキンを弟子とする。「選ばれし者」アナキンが暗黒面に落ちたため、弟子を始末するという苦渋の任務を果たすが、止めを刺すことはできなかった。アナキンの双子の遺児(ルークとレイア)の出産に立ち会い、ルークを親戚の許に預けると、自らはルークの成長を密かに見守るため「ベン・ケノービ」として隠遁生活を送る。

ルークの成長後、彼に父のライト・セーバーを渡す。ダース・ヴェーダーとして生き延びたかつての弟子との決闘で、ルークを逃すために自ら防御を解いて敵の刃(やいば)にかかる。フォースにより肉体を消し去るが、霊体としてルークに助言を与える。同じく隠遁生活を送るヨーダの許にルークを行かせる。

3)ヨーダ
身体は小さいながらも銀河唯一のジェダイのグランド・マスターである長老。訪ねて来たルーク・スカイウォーカーをジェダイとして鍛えるが、修行途中でルークは仲間の危機に飛び出して行く。寿命が訪れる間際にルークにある事実を打ち明ける。死後も霊体として、ルークを見守る。

ヨーダによるルークの訓練は、クレティアン・ド・トロワの作品において若きパーシヴァルに騎士道の訓練と社会的な振る舞いを教えた隠者ゴルヌマン・ド・ゴルオーのそれにあたる。

IV. 父無し子
マーリンもアナキンも、人間の父親がいない。

[A] マーリン
13世紀のロベール・ド・ボロンによると、キリストが地獄浄化を行ったことに腹を立てた悪魔たちが相談して、人間の乙女と交わって悪魔の子(反キリスト)を産ませた。しかし、産まれてすぐに洗礼を受けた御陰で父の悪い面は受け継がず、過去を知る悪魔の能力と洗礼によって神から授かった未来を知る能力を持つ。

[SW] アナキン
母シミは人間の男性との交わりなしでアナキンを身ごもる。彼は未来を見る力を持つ。

<無垢の面>
母の処女懐胎は聖母マリアのイメージを当然ながらよびおこす。これにより、アナキン=キリスト(フォースに均衡をもたらすとして、到来が予言された「選ばれし者」/救世主)という図式が想定される。
また、パドメに「あなたは天使なの」と訊く台詞は、パーシヴァルが騎士を天使か神と思い、「あなたは神さまですか?」と訊いたのと同じ、聖なる愚者に通じるところがある。

<悪の面>
激情的で、傲慢に陥りやすい。強大なフォースを持っているにも関わらず、ジェダイ・マスターたちに自分のことを認めてもらえないことに強い不満を持っている。その不満が、アナキンが暗黒面に落ちる下地となる。

傲慢 prideとは「七大罪悪」Seven Deadly Sinsの筆頭である。
明けの明星である光の大天使ルシファーは、神に成り代わろうという傲慢の罪を犯し、天から落とされた。

・『旧約聖書』「イザヤ書」14章12-15節
「黎明の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちてしまった。もろもろの国を倒した者よ、あなたは切られて地に倒れてしまった。あなたはさきに心のうちに言った。『わたしは天にのぼり、わたしの王座を高く神の星の上におき、北の果てなる集会の山に座し、雲のいただきにのぼり、いと高き者のようになろう』。しかしあなたは陰府(よみ)に落とされ、穴の奥底に入れられる。」

・「エゼキエル書」28章1節
「あなたは心に高ぶって言う、『わたしは神である、神々の座にすわって、海の中にいる』と。しかし、あなたは自分を神のように賢いと思っても、人であって神ではない。」

・「エゼキエル書」28章17節
「あなたは自分の美しさのために心高ぶり、その輝きのために自分の知恵を汚した故に、わたしはあなたを地に投げうち、王たちの前に置いて見せ物とした。」

・『新約聖書』「ルカによる福音書」10章18節
「わたしはサタンが電光のように天から落ちるのを見た。」

・ミルトン『失楽園』 Paradise Lost 第一巻36〜49行
 「彼は、これより先、傲慢に禍いされて、叛逆の天使の軍勢と共に天を追われていた。これらの天使の援助をえて、儕輩(せいはい)を尻目に自らを栄光の地位におき、あわよくば、一戦を交えて至高者(いとたかきもの)と対等たらんことを窺った彼であった。そして、野心満々、神の御座と御稜威(みいつ)に向かって、不敬かつ傲慢不遜な戦いを、場所もあろうに天において挑んだのだ。これこそまさしく身のほども知らぬ企てというべきであった。全能の力をもち給う神は、大胆不敵にも、あえて全能者に向かって武器をとって刃向かってきたこの者を、いと高く浄(きよ)き空から真っ逆様に落とし給うたのであった。彼は凄まじい勢いで炎々と燃えさかる焔(ほのお)に包まれて、奈落の底へ、底知れぬ地獄へと、墜落していったのだ。」(平井正穂訳)

V. 母との別れ
[A] パーシヴァル
母が引き止めるのも構わず、倒れる母をそのままに暗い大きな森へと馬を進めて行った。母は嘆きのあまり亡くなった。

[SW] アナキン
奴隷の身の母は自由になれないので、彼のみがクワイ=ガン・ジンと去る。後に、解放され結婚した母が攫われて痛めつけられ死に瀕しているのを助け出そうとするが、再会もつかの間、母は亡くなる。母の亡骸を義父の許へ持ち帰る。これにより、サタンのような憎しみと復讐の念が燃え上がる。暗黒面へ落ちるきっかけとなる。

 ミルトン『失楽園』第一巻106〜110行
  サタン「まだ、不撓不屈の意志、復讐への飽くなき心、永久に癒すべからざる憎悪の念、幸福も帰順も知らぬ勇気があるのだ! 敗北を喫しないために、これ以外何が必要だと言うのか?」(平井正穂訳)

VI. 父子/師弟の戦い
[A] アーサーとモードレッド
アーサーと、甥(13世紀以降は近親相姦の子)であるモードレッドとの最後の決戦で、一騎討ちをし、アーサーはモードレッドの身体を槍で貫く。モードレッドは槍を伝ってアーサーの手元まで来て、剣で父の頭に致命傷を与える。

・父の罪が子に受け継がれる
ウーサーがマーリンの力でコンウォール公に変装してもうけたアーサーは、後に両親が結婚したとはいえ、厳密には不義の子である。モードレッドはアーサーが父親違いの姉との間に、そうとは知らずにもうけた不義の子である。

[SW]
1) オビ=ワン(善)とアナキン(悪)との戦い [師弟]
2)ダース・ヴェーダー(悪)とルーク(善)との戦い [父子]
この1)と2)は、上位者(師/父)と下位者(弟子/子)との関係が裏返しの関係になる。
ルークは父ダース・ヴェーダー(アナキン)の暗黒面への誘いを拒む。
さらに、父であることを明かされると、父を拒否して身を捨てる。

 

 【3】<謎の美少年> The Fair Unknown
正体不明の少年が、アーサー王の宮廷にやってくる前後に数々の手柄をたてた後、自分の本当の身元を知る物語群をこう呼ぶ。
12世紀後期フランスの『謎の美少年』Le Bel Inconnuの題名から取られたモチーフ(話素)である。マロリーの「オークニーのガレス卿の物語」がその典型。

[A] アーサー、ラーンスロット、ガレス、トリスタン、パーシヴァル、ガウェインの息子ガングラン、モードレッドなどがこのパターンに当てはまる。

[SW]
1)アナキン
父のいない、辺境の無垢な少年であったが、「選ばれし者」the Chosen One /キリスト的存在・パーシヴァル的存在として旅立つ。しかし、傲慢の罪によりルシファー的存在へと変わり、暗黒面に落ちる。瀕死の状態からの復活を果たし、「ダース・ヴェーダー」が誕生する。

2)ルーク
父を知らずに、他家で育つ若者が、会ったことのない父の剣を受け継ぐ。そうとは知らずに、双子の妹に恋をする。しかし、妹と知り、近親相姦を回避することができた。戦いの中で師を失う。父からの暗黒面への誘いを拒否し、父と対決する。最後に、父の魂を救う。

SWで、ルークはアーサー的な主人公として描かれながらも、片姉と通じたり息子と対決して殺したアーサーの裏返しとなっていると言えよう。無邪気な善の存在であった父アナキンは、未来を予見し、その運命を変えようとして暗黒面に落ち、却ってその運命を避けがたいものにしてしまった。しかし、その父が陥った陥穽(かんせい)に嵌(はま)ることなく、ルークは父と対峙(たいじ)し、父は肉体的には死するとはいえ、その魂は救われたのである。

 

 おわりに
その昔、第1作目のエピソード4を初めて見た時に、「おお、宇宙でアーサー王をやっている!」と感激したのだが、その後エピソード1での「あなたは天使なの」というアナキンの言葉に、この子はパーシヴァルか! とまたまた興奮したのだった。しかし、その後の展開には驚かされた。パーシヴァルたるアナキンは、世界を救う聖杯を探し求める代わりに、世界を支配しようとする強大な悪の力を求めてしまったのだった。この点で、彼の物語は聖杯探求の裏返しでもある。


*本稿は、2014年に首都大学東京オープン・ユニバーシティ(飯田橋)で行った講義を基にしている。

 

 資料
Malory, Sir Thomas, The Works of Sir Thomas Malory, Eugène Vinaver ed., revised by P. J. C. Field, third ed., Oxford: Clarendon, 1990.
『フランス中世文学集1 信仰と愛と』新倉俊一、神沢栄三、天沢退二郎訳、白水社、1990。(ベルール『トリスタン物語』、トマ『トリスタン物語』、オクスフォード本『トリスタン佯狂』、ベルン本『トリスタン佯狂』、マリ・ド・フランス『すいかずら』(いずれも新倉俊一訳)を含む。)
クレチアン・ド・トロワ『ランスロまたは荷車の騎士』『ペルスヴァルまたは聖杯の物語』天沢退二郎訳、『フランス中世文学集2 愛と剣と』新倉俊一、神沢栄三、天沢退二郎訳、白水社、1991.
『作者不詳・中世フランス語散文物語 聖杯の探索』天沢退二郎訳、人文書院、1994.
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ 『パルチヴァール』加倉井粛之、伊東泰治、馬場かつや、小栗友一共訳、郁文堂、1974.
ゴットフリート・フォン・シュトラースブルク『トリスタンとイゾルデ』石川敬三訳、郁文堂、1976. 改訂第五版、1992.
ウルリヒ・フォン・ツァツィックホーフェン『湖の騎士ランツェレト』平尾浩三訳、同学社、2010.
ミルトン『失楽園』(上)(下)平井正穂訳、岩波文庫、1981.
『聖書』日本聖書協会、1980.

 
記事作成日:2018年9月15日  
最終更新日:2018年9月15日

 

 

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